循環呼吸のやり方と、毎日の簡単な練習方法【フルート】

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循環呼吸とは、管楽器を吹いて音を出しながら、鼻から息を同時に吸う方法です。

現代音楽で使われるイメージがありますが、特定の民族音楽では古くから用いられている奏法です。

古典派やロマン派の作品でも、循環呼吸を上手く使うことでより表現豊かに演奏できることがあります。

また、循環呼吸を練習することは、アンブシュアのコントロールのための良い練習にもなります。

循環呼吸は難しいと思うかもしれませんが、正しいやり方を理解して練習すれば誰でも必ず出来るようになります。

この記事では、フルートの場合にどのように循環呼吸の練習方法すれば良いか、実際の曲での応用方法、そして循環呼吸に関する補足をまとめております。

循環呼吸の練習方法

循環呼吸のやり方の説明を調べてみると、コップに水を入れてストローでブクブクするやり方が見つかるかと思います。

しかし実際には、コップの水をぶくぶくしていても循環呼吸は出来るようにはなりません。

ストローを吹く口と、フルートを吹くアンブシュアはあまりにも違います。

そして、フルートで循環呼吸をする場合には、ほっぺたに空気をためるのではなく、口全体に空気をためたものを舌の付け根や下あごを使って押し出すようなイメージで行ないます。

まずはコップをブクブクするのではなく、実際にフルートを持って練習してみましょう。

一番簡単に循環呼吸を練習する方法は、トリルをしながら息を鼻から吸います。

はじめは出来なくて当然なので、とにかく試してみましょう。

譜例1

※カンマの上に小さいスラーが書かれた記号が、循環呼吸で息を吸う箇所です。

循環呼吸の楽譜

ポイント


1. アパチュア(唇の息の通る穴)を小さめにするよう意識しましょう。

なるべく息のスピードを早く、口の中の息の圧力を高く保つことがポイントです。

2. ほっぺたを膨らませて息を溜めるのではなく、口の中全体に空気を溜める感覚です。

お〜〜ふ〜〜

と言う時の口の使い方に似ています。


トリルで音が続くようになったら、今度は音を伸ばしながら循環呼吸してみます。

次は音域を変えてみます。

譜例2


これらの音域でも、同様にトリルで練習してみましょう。

誰でも簡単にできる循環呼吸の楽譜
誰でも簡単にできる循環呼吸の楽譜
違う音域である程度息を吸うことができるようになったら、次は音が変化している途中で循環呼吸してみましょう。

譜例3

誰でも簡単にできる循環呼吸の楽譜

誰でも簡単にできる循環呼吸の楽譜

半音ずつ下げてゆきます。

譜例4

誰でも簡単にできる循環呼吸の楽譜

誰でも簡単にできる循環呼吸の楽譜


音が変化している途中でも循環呼吸ができるようになったら、実際に曲の中で使ってみましょう。

譜例5

バッハのチェロ組曲第一番より、循環呼吸の楽譜
バッハのチェロ組曲第一番より、循環呼吸の楽譜

音をのばしながら循環呼吸


トリルしながら循環呼吸がある程度できるようになったら、今度は音をまっすぐ伸ばしながら練習してみましょう。

トリルをしながら吸うのにくらべ、音を伸ばしながら吸うことははるかに難しいと思います。

まずは譜例1のように一番出しやすい音から始め、譜例2のように少しずつ音域を拡げてゆきましょう。
音をのばした循環呼吸の練習の楽譜


ある程度出来るようになったら、譜例3譜例4をトリル無しで練習してみましょう。

譜例3b
音を伸ばした循環呼吸の練習

譜例4b
音を伸ばした循環呼吸の練習

この練習がうまくできるようになるためには、数ヶ月練習が必要になるかもしれません。

上手くできなくても、毎日少しずつ循環呼吸の練習をすることをおすすめします。

曲中での循環呼吸の使い方の例


ここまでの練習である程度循環呼吸が出来るようになったら、次は実際の曲中でどんどん使ってみましょう。

様々な曲で循環呼吸を試してみるみることは、上達の何よりの秘訣です。

譜例6

レオノーレ序曲第3番より

八分音符=60
循環呼吸、ベートーヴェンのレオノーレ序曲第三番冒頭より

二分音符=120-132
循環呼吸、ベートーヴェンのレオノーレ序曲第三番

循環呼吸、ベートーヴェンのレオノーレ序曲第三番

循環呼吸、ベートーヴェンのレオノーレ序曲第三番

循環呼吸、ベートーヴェンのレオノーレ序曲第三番

ベートーベンのレオノーレ序曲第3番から、よくオーケストラのフルートのオーディションで課題になる例です。

ここでも循環呼吸を試してみましょう。

とても遅いテンポで振る指揮者が来た場合でも、循環呼吸を使えば余裕を持って演奏に臨むことができます。

譜例7


チャイコフスキー:ロメオとジュリエット幻想序曲より

次の例では、循環呼吸と通常のブレスを組み合わせることで、長いフレーズの演奏が容易になります。

※記号Ⅴは通常のブレスです。
チャイコフスキー幻想序曲『ロミオとジュリエット』より、循環呼吸

チャイコフスキー幻想序曲『ロミオとジュリエット』より、循環呼吸

チャイコフスキー幻想序曲『ロミオとジュリエット』より、循環呼吸

ブレスをする箇所の難しい、とても長いフレーズですが、何度か循環呼吸で息を補充するとかなり演奏しやすくなります。

ロマン派の情熱的な表現の中で、ビブラートを使いつつ循環呼吸するための良い練習になります。

譜例8


デュティユー:ソナチネより

循環呼吸の譜例・デュティーユ、フルートとピアノのためのソナチネより
循環呼吸の譜例・デュティーユ、フルートとピアノのためのソナチネより
循環呼吸の譜例・デュティーユ、フルートとピアノのためのソナチネより
循環呼吸の譜例・デュティーユ、フルートとピアノのためのソナチネより

上の例は、デュティユーのソナチネの第1楽章のブレスするのが大変に難しい例です。

循環呼吸を使うことでブレスが楽になり、テンポが崩れたり音楽が中断することがなくなります。

譜例9


シューベルト:しぼめる花により序曲と変奏曲
循環呼吸の譜例・シューベルト『しぼめる花』による序奏と変奏曲


序曲の終わりのフレーズ
循環呼吸の譜例・シューベルト『しぼめる花』による序奏と変奏曲
循環呼吸の譜例・シューベルト『しぼめる花』による序奏と変奏曲

序曲の途中に出てくる、息が足りなくなりがちなフレーズです。

息を吸っても良いですし、吸わないで節約して吹いても良いのですが、循環呼吸を使うとより自然にフレーズを演奏することができます。

循環呼吸について


循環呼吸は、英語で"circular breathing"や"permanent breath"といいます。

循環呼吸のやり方でよく言われるのは、コップに水を入れ、ストローを吹いてブクブクしながら鼻から息を吸う方法です。

イメージを掴むためには良いかもしれませんが、循環呼吸は水をただブクブクしているだけではできるようになりません。

ストローを吹いている口と、実際にフルートで音を出すときのアンブシュアは異なるためです。

ストローを吹く場合には、ほっぺたに空気を簡単にためることが出来ますが、実際にフルートを吹く場合に同じように口の中に空気をためようとすると、アンブシュアの形が崩れて音がうまく出ません。

実際に循環呼吸をするときに、ほっぺたはほとんど膨らましません。

舌の奥の方や顎を少し上げて空気を押し出すような感覚です。

結果的に口の中の圧力が高くなり、ほっぺたが少し膨らみます。

コップでぶくぶくしているときは、ほっぺたにためた空気を押し出してしまいがちですが。

ほっぺたに空気を溜めるのではなく、口を縦に開け、口の中全体に空気を溜めるようにしてみてください。

人によってやり方が異なるので、実際にフルートを吹きながら、自分なりに上手く行く方法を探してみてください。

参考



DVD付き 誰でも必ずできる! フルートの循環呼吸
必殺テクニック”循環呼吸”をマスターしてブレスコンプレックスを克服しよう。 1.循環呼吸の仕組み  2.練習法  3.実践編  4.番外編 

さらに詳しいやり方は、斉藤和志さんの著書『誰でも必ずできる!フルートの循環呼吸』に詳しく書かれています。

ぜひ参考になさってください。

循環呼吸のメリットとデメリット


循環呼吸ができるようになると、さまざまなメリットがあります。

例えば、弦楽器の原曲を管楽器のために編曲されたものを演奏する時、通常では不可能なフレーズに直面することはとても多いです。

そのとき、循環呼吸ができるのと表現の可能性がかなり広がるでしょう。

また現代音楽でも時々、循環呼吸が要求されることもあります。

さらに、循環呼吸がアンブシュアのコントロールのための良い訓練になることも忘れてはいけません。

デメリット


循環呼吸を演奏に用いるデメリットとして、鼻で息を吸う音が気になる時があります。

鼻で息を吸う音が気になり始めると、聴衆は音楽に集中することができなくなってしまいます。

また、もう一つのデメリットとして、不自然に長いフレーズが果たして本当に音楽的なのか問題となります。

自然に一息で歌うことのできないフレーズは、そもそもあまり音楽的ではないと考える方もいます。

循環呼吸を使って長いフレーズを一息で吹くことより、自然なブレスをとったほうが音楽的と考える人も少なくありませんので、使いどころには要注意です。


さて、次の項では実際にどのように循環呼吸を練習すれば良いか説明します。

循環呼吸するときの注意点


繰り返しになってしまいますが、循環呼吸をするときは常に以下の点には注意して正しく使用しましょう。

1. 循環呼吸ができるようになっても、正しい箇所で使わないと、逆に悪い結果になってしまいます。

音楽的に繋げる必要がない箇所で使うと、音楽に違和感を感じさせます。


2. シューシューと鼻から息を吸っている音が聞こえると、お客さんの音楽への集中力を損なってしまいます。

気をつけて慎重に息を吸えば、このような問題は生じません。

細かく何度も少量の息を吸うことで、大量に息を吸う必要がなくなりシューシュー音がしなくなります。

いつ吸ったのかわからないような、静かで自然な循環呼吸を目指しましょう。



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