モーツァルトの新しいフルート協奏曲『ヴェンドリング協奏曲(Wendling Flute Concerto)』について

 去年末にモーツァルトの新しいフルート協奏曲が見つかったそうです。

今回は、モーツァルトの新しい協奏曲について、またヨハン・バプティスト・ヴェンドリングという人物について書きます。




モーツァルトの新しいフルート協奏曲


新しい協奏曲の楽譜はスイスの図書館で発見され、2016年12月2日にトルコのイスタンブールで、作曲から239年という月日を経て初演されました。

『ヴェンドリング・フルート協奏曲』と呼ばれています。

編成は、ソロフルート/第1、2バイオリン/ビオラ/バス/オーボエ/ホルンです。

ニ長調です。



36分ごろからフルート協奏曲が始まります。


作曲の経緯


1777年、モーツァルトがマンハイムに滞在中、マンハイムの作曲家、王宮管弦楽団首席フルート奏者であったジョン・バプティスト・ヴェンドリングに出会います。

1777年11月22日に書かれた父に宛てた手紙の中で、モーツァルトはウェンドリングとの共同作業について記しています。

『今日21日の午前に私たち(※訳注:モーツァルトと母)は、あなたが17日に書かれた手紙を受け取りました。私は家におらず、カンナビッチのところで、ミスター・ヴェンドリングとコンサートプロジェクトがあり、私は彼にどのような楽器編成にするべきか決めなければなりません....』(モーツァルトの手紙)

“heüt den 21:ten vormittag haben wir ihren brief von 17ten erhalten; ich war nicht zu haus, sondern beÿ Cannabich, wo der M:r wendling ein concert Probiert hat, zu welchen ich ihm die instrumenti gesezt habe.”

原文(ドイツ語)はこちら→http://dme.mozarteum.at/DME/objs/raradocs/transcr/pdf/BD_377.pdf


おそらくこの協奏曲はマンハイム楽派の作風であり、ヴェンドリングが作曲したものをモーツァルトがアレンジしたものと考えられます。

ヴェンドリングについて


ヨハン・バプテスト・ヴェンドリング(Johann Baptist Wendling)は1723年6月17日にフランスのリボヴィレ(Ribeauvillé)に生まれ、1797年11月27日にミュンヒェン(Munich)で没しています。

1745年からDeux-Pontsの王宮で雇われ、1752年1月9日にソプラノ歌手であったDorotheaと結婚、同年マンハイム王宮管弦楽団に首席フルート奏者として入団します。

当時のマンハイム王宮では、ヨハン・シュターミッツやクリスティアン・カンナビッチが音楽監督として、マンハイム楽派を世に知らしめていました。

1788年からはミュンヒェン王立管弦楽団に入団し、その地で没します。

彼はフルートの名手として表情豊かな演奏をしただけでなく、マンハイム楽派の作曲家としても、シュターミッツやカンナビッチ、アントン・フィルツイグナーツ・フレンツルといった作曲家の影響を受けています。

モーツァルトの紛失してしまった4つの管楽器のための交響協奏曲(K.Anh.9/297b)のフルートパートは、ヴェンドリングのために書かれています。

またモーツァルトの1781年にバイエルン選帝侯カール・テオドールのために作曲されたオペラ『イドメネオ』のイリアのアリアでは、ヴェンドリングと彼の妻を念頭に作曲されています。

ヴェンドリングは熱血教師でもあり、金持ちのアマチュアフルーティストだけでなく、次の世代のプロフェッショナルを育てることにも熱心でした。

なお、ヴェンドリングの作曲した作品の楽譜(マニュスクリプトのみ)はIMSLPで閲覧することができます。

http://imslp.org/wiki/Category:Wendling,_Johann_Baptist

参考サイト:


http://slippedisc.com/2016/11/a-lost-concerto-by-mozart/(英語)

https://en.wikipedia.org/wiki/Johann_Baptist_Wendling(英語)

http://www.cmuse.org/flute-concerto-by-mozart-to-receive-world-premier-after-239-years/(英語)





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