楽曲分析 バッハ 無伴奏フルートパルティータ イ短調 BWV1013 第1楽章アルマンド


今回はJ.S.バッハの『無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV 1013』 から、

第1楽章 Allemande の分析です。




参考:伴奏付き音源(シュヴェードラーフルートによる演奏)





オリジナル楽譜


まず、こちらがオリジナルの楽譜となります。

Bach Partita flute solo  BWV1013

Bach Partita flute solo  BWV1013




和音分析




Bach Partita flute solo  BWV1013 chord

Bach Partita flute solo  BWV1013 chord
Bach Partita flute solo  BWV1013 chord
Bach Partita flute solo  BWV1013 chord


各記号の意味は次の通りです。


記号/呼び名/意味/芸大和声の記号

 T/トニカ/主和音/I

 D/ドミナント/属和音/V

 S/サブドミナント/下属和音/II,IV

 pT/パラレルトニカ/下中和音/VI
                  
 DD/ドッペルドミナント/属属和音/vV(Vの上にv)

 M/ミディアント/上中和音/III

 +T,+S/借用和音の一種。長三和音になった時に+をつける。

 Seq/ゼクエンツァ/反復進行/

 N/ナポリ6/ナポリの6/○II



ここでつけた和音は一例であり、当然ながら他の解釈ができます。

転回位については煩雑になるため省略しています。

また、フルート声部と和音で、和声学では禁則とされる連続や並達5、8度などができている箇所がありますが、フルートの声部の最低音を目安に和音を構成しているため、あえて和音をそのように記しています。



この楽章の和音を分析すると、前半部分ではイ短調の関係調からホ短調と転調し、その途中のクライマックスにあたる15小節から17小節では、ゼクエンツに和声的緊張感から前半の頂点を作っています。

前半部分の調は以下のように転調します。


前楽節(1~8)

イ短調(1小節~) →セクエンツァによりハ長調へ向かう(7,8小節)

後楽節(9~19)

 ハ長調から始まり、すぐに転調する。
絶えず転調を繰り返し、セクエンツァを経てホ短調に落ち着く。



繰り返し記号の後、後半部分は2つの部分+コーダという構成になっています。
後半第1部は以下のようになっています。


前楽節(20~25)

ホ短調から始まり、小さな転調(23~)を経てニ短調なります(25~)。

後楽節(25~30)

ニ短調ではあるがすぐ転調し、ト長調(28~)となるが、また転調する。



後半部第2部


前楽節(31~35)

1小節単位で転調を繰り返してゆき、緊張感が高まっていきます。
トニカが来ても、すぐに転調します。


後楽節(35~43)

さらに転調が激しくなり、1拍単位で、さらにセクエンツによる8分音符単位での転調でこの楽章のクライマックスを形作ります。


コーダ(43~46)

コーダに入ってからもまだ落ち着かずに小さな転調を繰り返し、イ短調に落ち着きますが、当時のトラベルソの最高音である3オクターブ目のaで曲は終わります。


和音を総括して


和声的にはそこまで複雑に作られてはおらず、イ短調と関係調を漂いつつセクエンツァによる緊張感を作り出しています。

フレーズの分析


単旋律しか出ないフルートで、どのようにポリフォニック(多声的)に構成されているのか分析します。


Bach Partita flute solo  BWV1013 2Stimmen

Bach Partita flute solo  BWV1013 2Stimmen

Bach Partita flute solo  BWV1013 2Stimmen

Bach Partita flute solo  BWV1013 2Stimmen


下の段に書かれている音符がバスになる音です。
常に2声で書かれていることがわかるでしょう。
詳しく分析するとさらに3声で書かれている箇所も発見できます(例えば第14小節G-C-F-Hの進行など)。


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