エチュードの練習方法についてまとめ

 エチュードを練習するときに、何も考えずただ吹いているよりも、ちょっとしたことを意識しながらさらうだけでかなり効果的に練習できます。

今回はゴールウェイと森正のエチュードの練習方法について考察してみます。



森正とゴールウェイ



私が初めて”エチュード”なるものに出会ったのは、10代初めの頃でした。

小学生の頃から、町の音楽教室に楽しく通っていました。

そして中学生になったばかりの頃、生意気盛りのガキんちょが何を勘違いしたのか音楽家になりたいと言い出してしまい、芸大出身の先生のもとで厳しくしごかれ(今思い返せば全く厳しく無く優しい先生ではあるが)ることになりました。

初めて先生の家へうかがい、レッスンの際に「エチュードは何をやってきたの?」と尋ねられ、エチュードが何なのかわからずにもごもごしていると先生はおもむろに部屋から出て行き、1分後くらいにケーラーのエチュードop.33の一番初めのものをコピーして持ってきてくださり、ついでにフォーレのファンタジーの譜面も、楽譜を注文して届くまではこれで練習するようにとコピーしてくださったことを覚えています。

これが私の人生で初めてのエチュードなるものとの出会いでした。

家に帰って、頂いたコピー譜を吹いてみて、「なんだこのつまらない曲は!しかも難しい。」と思ったことを覚えています。

そういうわけで、一緒に頂いたフォーレのファンタジーの美しさに感動しそればかり練習していたので、次のレッスンでこってり叱られました。

その時、先生が何かの本を持ってきて、森正(もり ただし)さんのエチュードに関する話をしてくださいました。


森正のレッスン


さて、本題である、エチュードの練習方法について、森正大先生がおっしゃったことを記憶を頼りに書いてみます。

もし何の本に書いてあるかご存知の方は教えていただけるとありがたいです。



森先生はレッスンのたびにエチュードを1、2曲持ってこさせ、必ず暗譜で吹かせたそうです。

エチュードを暗譜するのはなかなか難しいです。

というのも、曲と違い、音階や分散和音、トリルなどの同じ音形が長々と繰り返されていることが多く、すらすら吹くことができるようになっても暗譜をするという作業になると別の難しさが絡んでくるからです。

逆に言うと、暗譜するほど練習すればエチュードは吹ける方になり、そのくらい練習して初めて、そのエチュードの求める技術を習得できるということで、森さんの方法は厳しいですがとても理にかなっていると思います。

ゴールウェイ




数年後に出会ったジェームズ・ゴールウェイの『フルートを語る』という本の中で、さらに進んでエチュードを練習する方法が書かれています。

エチュードを暗譜しましょう。(中略)徹底的にやればすぐにどうやっても自然に暗記することができるようになります。必ずそうしましょう。何週間かかけて、皆さんがこれから取り組もうとするエチュードを一生懸命覚えましょう。(中略)最後に、皆さんにとって自分の名前と同じくらいにエチュードにもなれたら、半音上に移調したり半音下に移調したりしてみましょう。(同書P.162より引用)

ゴールウェイの方法は、暗譜したエチュードを移調して練習するということです。
これはなかなか難しいです。


バーンスタインやバレンボイムといった世界一の音楽家を数多く育てた、ナディア・ブーランジェは、弟子にバッハの平均律クラヴィーア曲集を暗譜させ、移調して全調で弾かせたそうですが、フルートはピアノから比べればはるかに簡単に移調できます。

コツをつかむまでがなかなか大変ですが、できるようになれば音感が良くなり、さらにフルートの腕前に磨きがかかるでしょう。




私はドイツに来るまでに音大で一通りエチュードをさらいましたが、今までさらった曲を振り返ってみると、暗譜していたり自分の身になったなと思ったものはほんの10曲にも満たないだろうということに驚きました。

1月もすでに下旬にさしかかってはいますが、2016年の目標として、エチュードを暗譜し、暗譜で全調で吹けるように練習しようと思いました。

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