音楽の表現力を上げるための練習
音楽を表現するために必要なものは、音楽に対する知識、音楽に向き合う気持ち、そして演奏技術です。
音楽に対する知識とは、単に何かを知っているということだけではなく、教養のように自分の身体に染み込んだ知識の事です。
例えば、音楽史を勉強し作曲家の生きていた時代のことを知識として知っても、その知識を音楽表現に生かすことはなかなか難しいものがあります。
また、音大などで和声を習い、楽譜を見てトニカや借用和音等がわかる程度では、これもまた演奏表現に生かすことは難しいでしょう。
しかし、音楽史と和声の知識が合わさって、当時流行していた和音を知り楽譜を読めばそれまでよりも深く楽譜を読むことができ、そうすれば演奏表現もさらに磨かれたものとなります。
付け焼き刃程度の知識では演奏には全く生かすことができませんが、最低限の和声と楽式に関する理解が、さらに表現力をあげるためには必要です。
音楽に向かい合うときに、音楽を愛するという情熱が無ければフルートを吹くという行為もただの騒音でしかありません。
熱意について、エマニュエル・パユのパリ音楽院時代の教師であったミシェル・デボストが、著書「フルート演奏の秘訣〈下〉」のなかでこのように述べています。
初めは吹くことが楽しかったのでフルートを続けていましたが、続けて行くうちに自分が上手くできない事があることに気がつき、だんだんと欠点ばかりに目がいってしまいフルートを始めた頃の楽器を吹く喜びを忘れてしまうことがあります。
生涯かけて音楽と付き合ってゆくことは、誰かと結婚する事と同じようになかなか難しいことであるようです。
なぜバッハやモーツァルトの曲が、ジョリヴェやプロコフィエフの作品よりも難しいのかデボストは前掲書のなかでガストン・クリュネルの言葉を引用しています。
バッハやモーツァルトなどの、いわゆる傑作がなぜ傑作と言われるのかというと、演奏者の人間性そのものがはっきりと演奏にむき出し現れるからでしょう。
その人がいままでどのように音楽を感じ、どのように愛して、何を表現したいのかがそのまま現れます。
ロマン派以降の複雑になってゆく作曲技法では表現できなかったものが、それら傑作の中では息づいており、バロック、古典期の作品がクラシックの中心的な音楽である状況は今も続いています。
もちろん、ジョリヴェやプロコフィエフなどの作品は素晴らしい音楽であり、フルートの傑作である事の間違いは無いのですが、演奏者本人の個性が現れるというよりも、どちらかというとテクニックがどのくらいあるのかが主に重視されます。
また、作品の内容や解釈ははっきりしており、バッハやモーツァルトなどの作品よりもかなり限定的で、あれこれ新しい可能性を追求する事はあまりできません。
表現力をあげるために具体的にまず何をすれば良いか簡潔に述べるなら、
1、音階練習などの基礎練習をしてフルートの演奏技術をあげる
2、たくさんの演奏を聴いて良いと思った事を取り入れる
3、音楽に関する本を読んで作曲当時の人々が何を考えて生きていたかを知る
以上3点が重要です。
そして自分が思った通りに、やりたい事を表現しようと努力してください。
そのやり方はおかしいよと誰かに言われた時、それでも自身がやりたいと思う事は貫きましょう。ただし、助言してもらった事ははなから否定せず、そのやり方もできるようにしておきましょう。
例えば、オーケストラでは指揮者の言う事は、たとえそれがおかしいと感じる事でもほぼ絶対守らなくてはなりません。そのうえで自分の表現したい事ができるやり方を見つけなくてはならないのです。
参考楽譜:
ペータールーカス・グラーフの参考書。さまざまな譜例の断片からなり、毎日のメニューに沿って練習できます。
移調の訓練にも最適な1冊です。
このグラーフの楽譜は、モイーズの「The French Flute School at Home」という曲集を基に書かれていると思われます。
残念ながらモイーズの楽譜は現在手に入れる事が難しく、ネットで有名どころをいくつか探してみましたが見当たりませんでした。
1、音楽に対する知識
音楽に対する知識とは、単に何かを知っているということだけではなく、教養のように自分の身体に染み込んだ知識の事です。
例えば、音楽史を勉強し作曲家の生きていた時代のことを知識として知っても、その知識を音楽表現に生かすことはなかなか難しいものがあります。
また、音大などで和声を習い、楽譜を見てトニカや借用和音等がわかる程度では、これもまた演奏表現に生かすことは難しいでしょう。
しかし、音楽史と和声の知識が合わさって、当時流行していた和音を知り楽譜を読めばそれまでよりも深く楽譜を読むことができ、そうすれば演奏表現もさらに磨かれたものとなります。
付け焼き刃程度の知識では演奏には全く生かすことができませんが、最低限の和声と楽式に関する理解が、さらに表現力をあげるためには必要です。
おすすめ文献
音大の授業で使われる、これ以上詳しい音楽史の教科書は無い。 分厚い。ただし日本語表記が少しおかしい。上中下全3巻。 |
こちらも音大の授業で使われることが多い。 こちらは西洋音楽史だけでなく日本音楽史も詳しい。 必要な知識がコンパクトにまとまっておりおすすめ。 |
こちらもすっきりまとまっており読みやすい。おすすめの1冊。 |
いわゆる”芸大和声”。日本の音大ではどこでも使われる。 これをやれば和声ができるようになる。ただし文中の日本語が難しい。 全3巻+解答例 |
こちらはもう少しわかりやすくコンパクトにまとまっている。 和声を理解するためにおすすめ。 |
ソナタ形式程度ならこの本を読めば分析できるようになる。 |
2、音楽に向かい合う気持ち
音楽に向かい合うときに、音楽を愛するという情熱が無ければフルートを吹くという行為もただの騒音でしかありません。
熱意について、エマニュエル・パユのパリ音楽院時代の教師であったミシェル・デボストが、著書「フルート演奏の秘訣〈下〉」のなかでこのように述べています。
”「信条あるいは奉仕を推し進めようとする熱烈さ、情熱。執拗で熱狂的な努力。」
最良の意味でのアマチュア(語源はamare(愛する))として音楽に愛を捧げる人、あるいはプロとして音楽に生涯をささげる人にとって、芸術への奉仕に挑む理由は、自己をこうじょうさせることにある。”(前掲書下巻328ページより引用)
初めは吹くことが楽しかったのでフルートを続けていましたが、続けて行くうちに自分が上手くできない事があることに気がつき、だんだんと欠点ばかりに目がいってしまいフルートを始めた頃の楽器を吹く喜びを忘れてしまうことがあります。
生涯かけて音楽と付き合ってゆくことは、誰かと結婚する事と同じようになかなか難しいことであるようです。
3、演奏技術
なぜバッハやモーツァルトの曲が、ジョリヴェやプロコフィエフの作品よりも難しいのかデボストは前掲書のなかでガストン・クリュネルの言葉を引用しています。
”器楽曲はあなたを引きたたせ、あなたの美質をみせることを目的とするが、バッハやモーツァルトはあなたの欠点を明らかにする。”
バッハやモーツァルトなどの、いわゆる傑作がなぜ傑作と言われるのかというと、演奏者の人間性そのものがはっきりと演奏にむき出し現れるからでしょう。
その人がいままでどのように音楽を感じ、どのように愛して、何を表現したいのかがそのまま現れます。
ロマン派以降の複雑になってゆく作曲技法では表現できなかったものが、それら傑作の中では息づいており、バロック、古典期の作品がクラシックの中心的な音楽である状況は今も続いています。
もちろん、ジョリヴェやプロコフィエフなどの作品は素晴らしい音楽であり、フルートの傑作である事の間違いは無いのですが、演奏者本人の個性が現れるというよりも、どちらかというとテクニックがどのくらいあるのかが主に重視されます。
また、作品の内容や解釈ははっきりしており、バッハやモーツァルトなどの作品よりもかなり限定的で、あれこれ新しい可能性を追求する事はあまりできません。
まず何をすれば良いか
表現力をあげるために具体的にまず何をすれば良いか簡潔に述べるなら、
1、音階練習などの基礎練習をしてフルートの演奏技術をあげる
2、たくさんの演奏を聴いて良いと思った事を取り入れる
3、音楽に関する本を読んで作曲当時の人々が何を考えて生きていたかを知る
以上3点が重要です。
そして自分が思った通りに、やりたい事を表現しようと努力してください。
そのやり方はおかしいよと誰かに言われた時、それでも自身がやりたいと思う事は貫きましょう。ただし、助言してもらった事ははなから否定せず、そのやり方もできるようにしておきましょう。
例えば、オーケストラでは指揮者の言う事は、たとえそれがおかしいと感じる事でもほぼ絶対守らなくてはなりません。そのうえで自分の表現したい事ができるやり方を見つけなくてはならないのです。
参考楽譜:
移調の訓練にも最適な1冊です。
このグラーフの楽譜は、モイーズの「The French Flute School at Home」という曲集を基に書かれていると思われます。
残念ながらモイーズの楽譜は現在手に入れる事が難しく、ネットで有名どころをいくつか探してみましたが見当たりませんでした。