シュテックメスト『歌の翼』による幻想曲【無料楽譜と伴奏音源】

 今回はフルートの発表会やコンクールでおなじみ、『歌の翼による幻想曲』について解説します。


シュテックメスト作曲:『歌の翼』による幻想曲 op.17


↓フルート+ピアノ音源↓


↓伴奏のみ音源↓



このページの楽譜は、私が作成したフルートパート譜です。
オリジナルのものですので、ご自由にお使いください。

伴奏譜こちらのページからダウンロードできます。

メンデルスゾーンの原曲のドイツ語歌詞の、日本語対訳付き楽譜はこちらです。

※楽譜が表示されないときは、右クリックから新規ウィンドウで開いてみてください。

歌の翼による幻想曲

On Wings of Song

歌の翼による幻想曲の解説



有名な『歌の翼による幻想曲』は、ヘンリ・シュテックメスト作曲 『華やかな幻想曲 作品17』のうち、第1番目の曲です。

『華やかな幻想曲』は5曲からなり、

1、歌の翼(Auf Flügeln des Gesanges)
2、眠れ、かわいい天使よ(Schlaf wohl,du mein herziges Kind)
3、おやすみ、私の愛する子(Gute Nacht du mein herziges Kind)
4、お願い、愛らしい小鳥たち(O bitt' euch, liebe Vögelein)
5、マンドリン弾きの女(Mandolinata)


で構成されています。

原曲「歌の翼」は、メンデルスゾーン作曲の『6つの歌曲 作品34』の2番目の曲です。

シュテックメストがメンデルスゾーンの曲をもとに、フルートとピアノのための華やかなファンタジーに仕立て上げました。

シュテックメストについて



シュテックメストについて、詳しい情報があまりありません。

ドイツで生まれたこと、『歌の翼による幻想曲』はおそらく1875年あたりに書かれたことくらいしかわかりません。

ドイツ語で検索をしても情報が出てきませんでした。

現在IMSLPで楽譜を閲覧することができる『華やかな幻想曲』と、『有名なオペラのテーマによる幻想曲』を見る限り、私の推測では彼はフルートの名手であり、フルートパートの書法からはおそらくかなりの腕前を持っていたと思われます。



楽譜を出版しているAugust Cranz Hamburg は1814-1897年まで存在していた出版社です。


「歌の翼」について



「歌の翼」は、ドイツの詩人ハイネの1822-1823年にかけての詩集『叙情的間奏曲(Lyrisches Intermezzo)』の9番目の詩です。

1827年にハンブルクで発表した詩集『歌の本(Buch der Lieder)』に収められています。


ハンブルク出身のメンデルスゾーンは、1834-1837年にかけて「歌の翼」を含めた『6つの歌曲 作品34』を作曲しています。

詩の内容



原文:

Auf Flügeln des Gesanges,

Herzliebchen trag’ ich dich fort,

Fort nach den Fluren des Ganges,

Dort weiß ich den schönsten Ort.




Dort liegt ein rothblühender Garten

Im stillen Mondenschein;

Die Lotosblumen erwarten

Ihr trautes Schwesterlein.

Die Veilchen kichern und kosen,

Und schau’n nach den Sternen empor;

Heimlich erzählen die Rosen

Sich duftende Mährchen in’s Ohr.

Es hüpfen herbei und lauschen

Die frommen, klugen Gazell’n;

Und in der Ferne rauschen

Des heiligen Stromes Well’n.

Dort wollen wir niedersinken

Unter dem Palmenbaum,

Und Liebe und Ruhe trinken,

Und träumen seligen Traum.



私訳:

歌の翼の上で、

私は心から愛する君をかなたまで運ぶ

はるかなガンジス川の流れまで、

そこは私の知っている最も美しい場所


そこには花盛りの庭があり、

静かな月明かりの中、

スイレンの花が待ち望んでいる

愛する妹を


スミレはくすくす笑い、戯れ、

そしてはるかな星々を眺めている

バラたちはひっそりと、

互いに香りの童話を話して聞かせる


ピョンピョン跳ねながらこちらへ耳を澄ます、

大人しくて賢いカモシカたち

そして遠くでざわめく、

清らかな流れのさざ波


そこで横になろうよ、

ヤシの木の根元に

そして愛と静けさと、

夢のように幸福な夢を

解説


まさにロマン派のハイネの美しい詩をもとにメンデルスゾーンが作曲し、その曲をもとにさらにシュテックメストが曲を作り、私たちが演奏します。

『自然を愛し、人間を愛する』という純粋な感情は、現代社会では生活に追われついつい忘れられがちですが、この曲を聴いたり演奏したりすることで『人生を愉しむ』ことを再発見できればと思います。

この曲は若いフルーティストの方にもよく演奏されており嬉しい限りですが、なぜか私の通っていた音大では誰も演奏しているのを聴いたことがありませんでした。

初心者向けの曲に思われがちですが、『歌の翼による幻想曲』を含むシュテックメストの『5つの華麗な幻想曲 op17』はなかなかの難易度であり、かなりの技巧が要求されます。

この曲はすでに著作権が切れておりIMSLPに無料の楽譜があるので、是非ダウンロードして演奏してみてはいかがでしょうか。

※『5つの華麗な幻想曲』の楽譜はこちら


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