キーシステム(リングキーとカバードキー、インラインとオフセット)の違い

楽器を選ぶときにもっとも重要なことの一つは、リングキーかカバードキーを選択することでしょう。

また、オフセットとインラインのどちらかを選ぶべきか、よくわからない方も多いかと思います。

この記事では、リングキーとカバードキーの違い、オフセットとインラインの解説など、キーシステムを選ぶ際に参考になる情報をまとめました。


リングキーとカバードキー


10万円以下のモデルにはリングキーが用意されていないものも多いですが、それ以上のモデルにはリングキーが用意されています。

カバードキー、オフセットのモデル

リングキー、インラインのモデル

一般的にカバードキーは初心者用、リングキーは上級者用という認識がありますが、これは根拠のないことなので、先入観で、初心者だからカバードキー、少し上達してきたからリングキーを選ぶということがないよう気をつけましょう。どちらを選択するかは、楽器店でリングキー、カバードキー両方のモデルを試奏させてもらい、手にあったものを選ぶと良いでしょう。

楽器店やメーカーは、少しでも多くのフルートを買ってもらいたいので、初心者にまずカバードキーの比較的安価なモデルを買ってもらい、上達したらリングキーの高価な楽器を買ってもらえるようなビジネスモデルを構築しています。

リングキーに関する迷信


時々、リングキーの方が音の抜け方がよく響きが明るいと言われることがありますが、音色の違いは通常はわかりません。また時々、リングキーの方が音のつなぎ目が滑らかになるということを耳にしますが、奏者の指のコントロール次第です。リングキーを使っていても、滑らかとは言い難いレガートで演奏している奏者が多いのは事実です。

特に初心者にとって、これらのような聞き分けることや吹き分けることは難しいので、微妙な音色の違いにこだわるよりもまずは自分の指にあった楽器を演奏する方が、得られる恩恵ははるかに大きいでしょう。

時々、リングキーのフルートを買って、リングにゴムやシリコンの詰め物をしている人がいますが、音色や音程の面から見てデメリットしかないので、指が細かったり、指があまり開かない人は迷わずカバードキーのフルートを購入しましょう。

くれぐれも見栄でリングキーのフルートを選ばない事をおすすめします。どうしてもリングキーのフルートが欲しいのであれば構いませんが。

リングキーのメリット


それでもリングキーのフルートを使っているプロが圧倒的に多い理由には、フルーティストは現代音楽をたくさん吹かなければならないという事情があります。特に、リングキーでしかできない重音奏法や、微分音程(半音よりももっと小さい音程。1/4音。)が要求されることはかなり頻繁にあります。また、いくつかの変え指や4オクターブの高音域でリングキーを使うことがあります。

その際に、リングキーの穴を塞がない状態でキーを押さえることを要求されるので、これらの奏法はカバードキーではできないことが多いです。

しかしこのような曲は音大に入るくらいの腕前がないと出会うことはあまりないので、アマチュアの方はあまり考慮する必要はありません。音大を目指すのならばリングキーの楽器を選んだ方が良いでしょう。しかし、穴を塞ぐ詰め物をしないとリングキーが塞げないくらい細い指の方は、カバードキーを選んでもそれほど不自由はありません。

もっとも重要なことは、楽器が自分の手に馴染むかということですので、カバードキーに対する謎の『偏見』が少しでも改善されればと個人的には思っています。

リングキーの起源


フルートはもともと、全てのトーンホールにキーがついてはいませんでしたが、テオバルト・ベームが行なったフルートの設計の全面的な変更で、トーンホールを塞ぐためのキーが取り付けられました。

初期のベームフルートはリングキーでしたが、現代のものとは違いリングキー自体にはタンポはついておらず、あくまで指では塞ぐことのできないトーンホールを塞ぐための補助に過ぎませんでした。

初期のベームフルート1840年頃
『Die Boehmflöte,Karl Ventzke
Verlag Das Musikinstrument Frankfurt am Main,1966』

これが数年後の1848年頃には、現代のカバードキーのような外観になり、1960年頃には現代の楽器とほぼ同じものになります。

ベームの製作したベーム式フルートは、ベームの住んでいたドイツでは受け入れられず、まずはフランスで流行したため、フランスではリングキーのモデルが生産されるようになり、改良が加えられた結果、今日のフレンチモデルと呼ばれるリングキーのフルートが出来上がりました。

インラインとオフセット


インラインとオフセットとは、左手の薬指のキーの位置が他のキーと同じようにまっすぐに配置されているものがインライン、キーが少し外側に配置されているものがオフセットです。手の小さい方や指の短い方には、オフセットが向いているとされています。どちらでも音色や指使いに違いはないので、指にあったものを選ぶと良いでしょう。

注意しておきたいのが、古い楽器でE-メカニズムのついたインラインの場合、キーの戻りが悪くなってしまう不具合があります。このためミヤザワやブランネンなどのメーカーは、この問題を解決するブロガーシステムという特殊な設計をしていますが、現代の新しい楽器ではほぼ問題が起こらないので、あまり気にしなくて良いでしょう。

ポイント



  • 自分の薬指の長さにあったものにすること。
  • 手首や手の甲に緊張がなるべくかからないものにする。
  • ソ-ラのトリルをしてみる。



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