タンギングの種類



 特にバロック物を演奏するときに重要になってくることは、”タンギングを使い分ける”ということでしょう。

多彩なタンギングを使い分け、繊細なアーティキュレーションで音楽を表現するということは、バロック音楽において特に重要なことであったと考えられています。

ダブルタンギングの発音も、バロック時代にはいくつもの種類がありますし、トリプルタンギングにいたっては当時のやり方はなかなか難しく、練習していると舌が絡まってしまいそうな難しい発音のものもありました。



タンギングの種類


クヴァンツの『フルート奏法試論』や、シュヴェードラーの『フルートとフルート奏法』(参照:「"Di-l"タンギングについて」)には、普段あまり馴染みの無いソフトタンギングについて書かれています。


シングルタンギングだけみても、時代や国、スタイルよって理想とされるやり方が全く異なります。

たとえば、フランスでは、舌の先が唇についたり、場合によってはアンブシュアの間から舌の先端がのぞくようにする、と説明されていることもあります。
イチジクの種をぷっと飛ばすように、などと言われることもあります。

それに対して、ドイツなどの国では舌を前歯の裏にしっかりとつけ、しっかりと発音されます。

日本ではどちらかというとフランスに近いやり方が好まれる傾向にあります。

これらタンギングのやり方は、その国の言葉の、特に子音の発音のされ方に強く影響されていると言っても良いでしょう。


フランス人の日常会話は流れるように話されます。
逆にドイツでははっきりと子音が発音されます。

日本などのアジア圏の国の言葉は、どちらかというと子音よりも母音の方が優勢であるせいか、フランス人のようなやり方を真似てもなかなかはっきりと軽やかに発音することが難しく、くすんだタンギングになってしまいがちです。

どこが理想の舌の位置か?


理想の位置についてはさまざまな議論があり、これが正しいというのはスタイルによって異なります。

ただし、1種類だけでは色々な曲に対応するのは難しいです。

タンギングとは言えないかもしれませんが、ピアニッシモのときに静かに発音するため、唇を軽くプッをするやり方から、スラップタンギングのような舌からポンッと音が出るようなやり方まで、さまざまな方法を学ぶ必要があります。


早く舌が動かせる位置=理想の位置である、ということはなかなか無いでしょう。
早く舌が動いても、発音が曖昧だったりあまりきれいで無いことがよくあります。

逆に、良い発音ができる舌の位置であっても、なかなか俊敏に舌が動かず、結局はダブルタンギングばかり使っていて、シングルタンギングがなかなか上手くならないということも起こりがちです。

舌は筋肉と神経の塊ですので、鍛えれば鍛えた分だけ動くようになりますし、逆にあまり使わなければ衰えます。

ぜひ、毎日すこしずつでも良いので、タンギングのみをトレーニングできるようなエチュードを日課練習に取り入れてみてはいかがでしょうか。


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