フルートの種類(ピッコロ、アルトフルート、バスフルート、その他特殊管)


フルートには色々な大きさがあるのはご存知でしょうか?今回の記事では、様々なフルートの音域や特徴をご紹介します。



フルート


筆者所有のフルート

日本語でフルートといえば、この楽器の事を指しますが、フルートとは笛という意味です。

ドイツ語ではQuerflöteやGroßflöte、フランス語ではflûte traversière、イタリア語でflauto traversoと表記し、横笛という意味です。

フルートの材質は洋銀、銀(主にスターリングシルバー)、金(9K,14K,18K,24K)等で作られています。木材(主にグラナディラ)やプラチナなどでフルート作っているメーカーもあります。

安いものでは数万円の物から、高い楽器は一千万円を超えるものまであります。

フルート音域は低いド、もしくはシから、4オクターブ上のド〜ファの音域が演奏されます。

低いシから、4オクターブ目のドあたりが使われます。
時々、もっと低い音や高い音を演奏するよう要求される事があります。そのたびにフルート奏者は足部管に延長管をつけたり、高い音の出る指使いを探したりと苦労することがあります。

ピッコロ


筆者所有のピッコロ

ピッコロとはイタリア語で「小さい(piccolo)」という意味があります。

その名の通り、フルートに比べて小さいため、とても高い音域を演奏します。

ソロ曲で演奏されることも時々ありますが、とても甲高い音色なので、主にオーケストラや吹奏楽で活躍します。

音域は低いレから、4オクターブ目のドが曲で用いられます。

ピッコロは楽譜に書かれている音(記譜音)よりも1オクターブ高い音が出ます(実音)。
ピッコロの実音は記譜音よりも1オクターブ高いです。
ピッコロの音域。
譜例左がピッコロの記譜音、右が実音です。
ピッコロの材質は、木材(グラナディラやエボニー、パリサンダー、コーカスウッド等)や金属が主に使われます。

頭部管が金属製で管体はグラナディラ製を用いたもの、全てグラナディラでできたものの2つが主流です。

他にも金製の頭部管を持つピッコロ、総銀製のピッコロ、リッププレートにプラスチックのものや、全てプラスチックでできたもの(パールの『グラナディエッタ」が有名です。)があります。

また、木製の異なる材質を組み合わせたピッコロ(例えば茶色いコーカスウッドの頭部管に、黒いグラナディラ本体など)を使っているピッコロ奏者もよく見かけます。ピッコロの頭部管だけ製作しているメーカーもたくさんあり、また価格もフルートの頭部管よりも安いため、他社製の頭部管を使う事は一般的です。

ほとんどのピッコロは頭部管から足部にかけて細くなる円錐管ですが、フルートのように円筒管ボディを持ったピッコロも発売されています。音色は円錐管のものに比べてボヤケた印象です。

マーラーの交響曲などによく、低いドを演奏するよう指示されることがあります。一般的には、ピッコロ奏者は自作、または楽器専用の延長管を差し込んで、低い音を出すこともあります。また小指で足部管の端の穴を半分ほど塞いで低い音を出す事もあります。

中にはフルートのようにCまで出せるピッコロもあるようです。(例:ブラウンのピッコロなど。http://www.braunflutes.com/piccolo.htm

ピッコロを練習するときは、耳栓を使ったほうが良いです。ピッコロの音色はかなり鋭いので、耳栓を使わないで練習をしていると、難聴になってしまう恐れがあります。

ピッコロは音がよく通るので、家で練習するときは近所迷惑にならないよう気をつけましょう。


アルトフルート

アルトフルートの画像

アルトフルートはフルートよりも管長が長い楽器で、フルートよりもさらに低い音を出すことができます。

頭部管がまっすぐなものと、子供用フルートのように曲がっているものがあります。


このように頭部管の継ぎ目が曲がっているものもあります。


G管の楽器なので、楽譜に書かれる最低音はフルートと同じドですが、実音は完全4度低いソがでます。

アルトフルートの音域。
左はアルトフルートの記譜音、右が実際に出る音(実音)。
G管の楽器はややこしいですが、要するにドの指遣いでソ、レの指遣いでラ、ミはシ....というように完全4度低い音がでます。

アルトフルート用の楽譜はG管用に移調してありますが、もしフルートのようなC管のための楽譜を他の楽器と一緒に演奏する場合には移調しなくてはなりません。

C管のために書かれた楽譜通りの音を演奏したければ、完全4度高く移調して演奏する必要があります。

アルトフルートでC管の楽譜を演奏する場合、移調しなければなりません。
アルトフルートでC管用に書かれた曲の楽譜を演奏する場合には、移調しなければなりません。
左の楽譜に書かれた音程を演奏するには、右の指遣いをしなければなりません。

現代のフルートの運指システムを作ったテオバルト・ベームは晩年、アルトフルートの研究に没頭し、アルトフルートやアルトフルートのための曲をいくつか残しています。

今日でもアルトフルートの持つ独特の色気のある音色は、近代以降の作曲家に好まれており、オーケストラ作品のみならず、アンサンブル曲やソロ曲にも名曲がたくさんあります。

バスフルート


バスフルートはC管の楽器で、クラシック音楽にはあまり使われませんが、現代音楽やジャズ、フルートオーケストラではよく使用されます。

バスフルートはアルトフルートよりもさらに大きく重いので、立って演奏する事はなかなか大変です。座って演奏する際には、足で楽器を支えるための棒を使うことがあります。


バスフルートにはC管の他にも、さらに音域の低いF管やA管といった様々なものがあります。

Paas floote.jpg
Wikipediaより、T字型のA管バスフルート。
By celesteh 


その他に、もっと音域の低いコントラバスフルートや、サブコントラバスフルート、ダブルコントラバスフルートなどといった'キワモノ'もありますが、フルートオーケストラ以外では滅多に見ることがないでしょう。

これらのコントラバスフルート系の楽器は、もはや横に構えることも、縦に構えることもできないので管体は4の字型に曲げられています。


ソプラノフルート

Gtreble full together copy1.jpg
ソプラノフルート。
Wikipediaより。
Di Jonathan Myall Music 

ソプラノフルートはEs管の楽器で、フルートよりも短3度高い音が出ます。
ドイツ語ではTerzflöte、すなわち『3度のフルート』という名称で知られていました。

つまり、ドの指遣いで3度上のミ♭の音が出ます。

フルートとピッコロの中間の音色を持っていますが、現代で使われる機会は滅多にありませんが、モーツァルトやベートーヴェン、チャイコフスキーの時代には時々使用されています。

ドイツのボンにあるベートーヴェンハウスでは、当時のソプラノ・フルートが展示されています。

なお、日本の超絶マニアックな楽器を作っているフルートメーカー『コタトフルート(古田土フルート)』では、F管のソプラノフルートを製造、販売しています。上述のコントラバスフルートもあります。

コタトフルートのホームページ:http://kotatoflute.web.fc2.com/SopranoFlute.html

トレブルフルート

Treble-flute-case.jpg
トレブルフルート。Wikipediaより。
By Jonathan Myall Music 

トレブルフルートはG管の楽器で、フルートよりも完全5度上の音が出ます。

ソプラノフルートよりもさらに高い音が出ます。

トレブルフルートは本来、「シンプルフルート」と呼ばれる伝統的な楽器にベームシステムを積んだもので、主にスコットランドや北アイルランドのブラスバンドで用いられるそうです。

フルートダモーレ



フルートダモーレはA管の楽器で、フルートより短3度下の音が出ます。

最低音はラ♯、もしくはラ、古い18世紀の楽器ではラ♭まで出るものもありました。

テナーフルートと呼ばれることもあるそうです。

フルートダモーレは、フルートとアルトフルートの中間の音域を持つ楽器です。

アルトフルートとフルートダモーレの大きな違いは、管の直径と長さの比率です。

アルトフルートは管の直径が管の長さに対して広く作られており、低音がパワフルに演奏できるように設計されていますが、そのせいで高音域が出しづらかったり、音程の問題が起こってしまいます。

フルートダモーレは、フルートと同じ管の直径と長さの比率を持っているため、とても柔らかい音色がし、高い音域でも演奏しやすく音程も正確です。

しかし、フルートダモーレを使うメリットはあまりなく、フルートとアルトフルートを持ち替えた方が効果的なため、めったに出会う機会はないです。

三響フルートの製造しているフルートダモーレが世界的に有名です。

三響フルートのホームページ:http://jp.sankyoflute.com/catalog/damore.html

フラウト・トラヴェルソ



フラウト・トラベルソとは、イタリア語で「flauto traverso」、すなわち「横笛」という意味ですが、今日では17~18世紀に流行したバロック・フルートのことを指します。略してトラベルソと言われます。

バロック・フルートとは、『フルートの歴史』でも説明したように、主に1キーをもつフルートのことです。もう少しキーが多いものはクラシカルフルートと呼称されます。

フラウト・トラベルソは、現代のフルートと同じように横に構え演奏しますが、現代のフルートとは全く別物です。

まず、運指が異なります。半音階を演奏することはかなり至難の技です。そしてクロス・フィンガーと呼ばれる、音響的にはあまり理想ではない運指を頻繁に用いる必要があります。


現代のフルートは頭部管は放物線状、そして管体は円筒形をしていますが、フラウト・トラベルソは円錐管、それもかなり複雑な形をしており、楽器ごとに異なります。円錐管とは、頭部管の直径が足部よりも太く作られている管の事です。

トラベルソは、発音に用いるタンギング(舌突き)を数種類も使い分ける必要がある、とても繊細な楽器です。


シュヴェードラーフルート


マクシミリアン・シュヴェードラー(1853-1940)は、ドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団で首席奏者を務めていたフルート奏者です。カール・ライネッケの有名な『フルート協奏曲ニ長調op.283』は、彼に献呈されています。

シュヴェードラーはゲヴァントハウス管弦楽団に入団する以前、デュッセルドルフでオーケストラ奏者を務めていましたが、円筒管ベーム式フルートの音色に疑問を持っており、伝統的な円錐管の楽器を吹いていました。

ゲヴァントハウスのシュヴェードラーの前任者は、円錐管フルートを吹く奏者を後任に探しており、シュヴェードラーがその地位を得ることになりました。

ゲヴァントハウス就任3年後の1884年、ドイツのエアフルトという町の楽器メーカーC.クルスペと共作で最初の楽器を開発し、次の年に『シュヴェードラー・クルスペモデル1885』として発売しています。

これはシュヴェードラーがそれまで吹いていたメイヤー式フルートを改良したものでした。

この楽器の主な特徴は、

・歌口の両脇の大きな隆起

・メイヤーシステムのような管体

・ベームフルートのような足部管

という、色々なフルートのメリットを採用している事です。

レフォームフルートの歌口の隆起
シュヴェードラーフルートの歌口の隆起。

のちにシュヴェードラーはライプツィヒの楽器製作者M.M.メーニヒと共に、シュヴェードラーフルートを完成させました。メーニヒ製の頭部管はプラスチック製のリッププレートに金属、そしてキーシステムも以前のモデルよりさらに洗練されたものになっています。また後年は頭部管の金属部分が長くなり、より力強くダイナミックな演奏を目論んいました。

メーニヒやクルスペ以外の、当時のドイツのいくつかの楽器メーカーでも、シュヴェードラーフルートを製作しています(例:Fulda、Kohlert、Zimmermann)

参考「Rick Wilson's Historical Flutes Page」(英文):
http://www.oldflutes.com/articles/schwedler.htm



Next Post Previous Post