演奏家のためのモニタリング用フルデジタルヘッドフォン『ATH-DN1000usb』


 私は長年、オーディオテクニカのATH-A900というヘッドフォンを愛用してきました。
このヘッドフォンはモニタリング用に作られており、オーケストラの声部の多い音源もくっきりと描写してくれる素晴らしいヘッドフォンでした。

しかし、10年近く酷使したためついに壊れてしまったため、新しいヘッドフォンを購入することにしました。

ネット上にはヘッドフォンのレビューはたくさんありますが、クラシック音楽家が書いた記事は以外に少ないので、プロ音楽家としての視点からいろいろと感想を書いてみます。


ソニー MDR-CD900ST




モニター用のヘッドフォンでもっとも定番なのは、ソニーのMDR-CD900STでしょう。
私も所有しています。

しかし、このヘッドフォンの音色はフラットではなく低音が強調されソニー独特の音色づけがどうもダメでした。

そしてなによりも、音の解像度がATH-A900よりも低いのです。

ATH-A900で聴こえていた声部が、このソニーのモニタリングヘッドフォンでは聴こえないことが多々ありました。

オーケストラの曲を音源を聴きながら勉強するためには、全く役に立ちませんでした。


ATH-DN1000USB





どうせ買うなら解像度が前のものよりもより一層高いヘッドフォンにしようといろいろ調べていて見つけたのが、オーディオテクニカから2014年に発売されたATH-DN1000USBというヘッドフォンです。

これは『Dnote』という技術を用いデジタルの音源をアナログに変換せず、デジタル信号のまま音に変換するため理論的には音の劣化がとても少ないそうです。

そしてデジタル信号を伝えるため、ヘッドフォンを差し込むプラグの代わりにUSBを差し込みます。

その斬新な所に惹かれ早速購入しました。

音の解像度


まず音の解像度が素晴らしいです。

オーケストラが厚い響になっても各声部がはっきり聴こえます。

また私が普段演奏しているフルートという楽器はとても倍音が豊かなために、ヘッドフォンによってかなり音色が異なりますが、原音にちかい音色で再現してくれます。

自分の演奏を録音したものを高音域が抑えられたヘッドフォンで聴くと、綺麗な音色に聴こえますが、自分の音色の粗を探して改善するためには役に立ちません。

できるだけ忠実に、良いところも悪いところも聴き取れることはとても重要です。


ホワイトノイズ


このヘッドフォンを購入する際にいくつかレビューを読みましたが、ホワイトノイズについて言及されている記事がいくつかありました。

実際に購入して聴いてみると、確かにホワイトノイズが聴こえます。

特に今流行りのストリーミング音楽サービスを聴いているときに顕著に聴こえます。

しかし音楽が途切れている間はホワイトノイズは全く聴こえません。

曲が始まる時、初めの音が出る直前や、休符などで無音の箇所でホワイトノイズが聴こえてきます。

ただ、自分の録音機で録音した音源を再生してみるとホワイトノイズはほとんど乗っていないため、音源を圧縮する際に生まれるエラーのようなものまで再現してしまうのかもしれません。

使用環境


私は少し前のMacBook Proで使用していますが、音源を再生中に発生するホワイトノイズは、音楽を再生していないときには完全に無音です。

ちなみに『Audio MIDI』設定からUSBに出力するフォーマットを24bit/192.0kHzに設定してやると、とても素晴らしい音色で再現してくれます。デフォルトではおそらく16Bit/44.1kHzに設定されているかもしれませんが、変更するとかなり音色が変わります。


スマートフォン


試しにスマートフォン(Galaxy s7 edge)にUSB変換コネクタを使用し使ってみましたが、何も設定しなくても純正の音楽アプリから音が出せました。ただしスマートフォンによっては再生できない可能性がおおいにあるので注意が必要です。

また、純正音楽アプリのアップスケールなどの機能は利用できませんでした。

出力もヘッドフォンのLEDが青になっていたので、24bit/192.0kHzという設定での使用はできませんでした。


以上、少し使用して思ったことを書いてみました。

また随時、このヘッドフォンのことは書いてみようと思います。

発売当初は6万円以上していたヘッドホンもだいぶ値下がりし、流通量も減ってきているので、もしDnoteに興味がある方は早めに購入を。



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