フルートの音程について知っておくと便利な事

 古代から現代に至るまで、さまざまな楽器製作家や理論家によって、本当に正しい音程が出せる楽器や調律方法が考案されてきました。
(参考記事:『日本の五音音階について』)

現代のフルートは昔のものに比べてはるかに音程が良いですが、それでも完全な音程で演奏できる楽器は未だにありません。
特に楽器を設計する上で妥協が必要な3オクターブ目などは、他のオクターブの音程や運指の都合などから理論的に不完全にならざるを得ません。

それらの不完全な部分は、奏者自身で補わなくてはなりません。

今回は、知っておくと役立つ、音程の調整に関する事をまとめてみました。




フルートの音程の変化


フルートの音程を変える要素は以下のものです。


1、アンブシュアと歌口の距離

2、頭部管の抜き具合

3、温度

1、アンブシュアと歌口の距離


息を早く出すと音程が上ずる事がありますが、実は息の速度自体には音程を変える要素はありません。

息の速度が増減することで音程が変わる事はありませんが、息を速く出すと口の中の圧力が必然的に高くなり、アンブシュアが少々形が変わってしまうので、息の方向が少し上を向いてしまい、その結果として音程が上ずってしまうようです。

アンブシュアをしっかりコントロールすれば、息の速度を速めても音程は変わりません。


アパチュア(唇の空気の出る穴のこと)とフルートの頭部管の歌口の距離が遠くなれば、音程は高くなり、逆に近くなると音程は低くなります。

音程が高すぎる時には息を下向きに出すように意識しますが、こうすることでアパチュアと歌口の距離が近くなるので音程が下がります。

2.頭部管の抜き具合よる音程の変化





ゴールウェイ著『フルートを語る ジェームズゴールウェイ 著/吉田雅夫 訳 』の中の、アルベルト・クーパーの寄稿によれば、頭部管を 1 mm抜けばおよそ1 Hz 音程が低くなり、逆に1mm押し込めば1Hz高くなります。(同書75ページ)

抜きすぎると音色がぼやけてしまうので、3~5mmの標準的な抜き具合から大きく外れない程度に調整すると良いです。

普段から頭部管を抜きすぎている場合には、前述1のアンブシュアと歌口の距離がうまくコントロールできていないので、アンブシュアについて見直す必要があります。

参考:安定したアンブシュアを得るために大事なコツ


3.温度による変化


フルートの材質による音色の変化を考察して有名なフレッチャーの著作『楽器の物理学』によれば、楽器の内側の温度が1度上がると、音程が約1.36Hz変わるそうです。

寒い日に音程が低いのは、温度が低いと空気の密度が増え重くなり、そのせいで音程も下がってしまいます。

少々汚い話ですが、たとえば炭酸飲料を飲んでフルートを吹いている時にげっぷがでると音程が下がります。

これは炭酸の元である二酸化炭素は、空気よりも重いためです。

Next Post Previous Post