フルートは材質によって音が違うか
おそらく理論と実践との間で一般的に決着がついていないテーマの一つに、フルートの材質が変わると音色にどのように影響するのかということがあります。
音楽音響学では、フルートの音色は材質によって変わるものではないそうです。
理論上は、材質でフルートの音色は変わらないけれども、耳で聴いた印象は確かに材質ごとの音色が違うと感じます。
以下の材質ごとに異なる音色の傾向は、私の主観によるもので正しい統計をとったわけではないことをご了承ください。
モイーズは生涯、洋銀の楽器を使っていました。
しかも頭部管は、蚤の市で見つけたものを使っていたというから驚きです。
彼は最も安価な材質のフルートを演奏し、最も有名なフルーティストになりました。
彼の録音を聴いてみると確かに彼のフルートの音色は、洋銀特有のチャーミングな、悪く言えばチャーミングなだけの音色です(あくまでも楽器の音色の話であり、もちろん音楽解釈に関して言えば彼の演奏はただチャーミングなだけの演奏ではない。むしろ結構激しい)。
モイーズの時代から後には銀が主流となり、さらに金の楽器を持っている人が増え、最近では木製の楽器を目にする機会がかなり増えました。
フレンチスタイルでは銀の楽器がよく用いられるような気がします。
最近聴いた演奏で、ヴァンサン・リュカのイマージュの出だしの ” ミ ” が、この世のものとは思えない美しさでしたが、彼の楽器は銀色です。
銀は大変華やかな音色ではありますが、使い手によっては大変やかましい耳障りな音にもなってしまうので、個人的には吹くのが一番難しい材質だと思っています。
一般的には純度92.5%のスターリングシルバーのものが主流ですが、さらに純度の高いブリタニアシルバー(純度95.8%)やピュアシルバー(純度99%以上)のものもあります。
同じメーカーの銀製品でも、純度ごとに実際には唄口のカットの仕方だったりテーパー(頭部管の管体の形)の具合が異なっていることが多く、一概に材質の純度の違いによる音色の差があるのかどうかは私には聴き取れません。
また、巻き管や、小さな粉末状の銀を高圧力で固める工法も、どの程度、音色や操作性の違いがあるのかは、残念ながら私にはハッキリとはわかりません。
主に9K、14K、18K、24Kがあります。
Kはカラットのことで、24Kはほぼ100%の金です。
最近では19.5Kという純度のものも主流になっています。
金は純度ごとに全くべつの材質であり、また同じ純度でも一緒に混ぜる金属次第で色も性質も違ってくるので、一概に言えません。
おおまかな私の印象では、金は銀よりものっぺりした音色で、時たま銀よりも音色が通らない演奏を聴くことがありますが、吹く人が吹けば大胆に音量の差をつけられ、より表現力豊かな演奏になりえます。
プラチナを買えるのなら金の楽器を買えばいいのにと思ってしまいます。
見た目的にもプラチナは銀に見えるし、音色もかなり鋭いし、この材質の魅力は何でしょう?
ただし、銀にプラチナメッキをしたものは本当に素晴らしい楽器が多いと思います。
ジャック・ズーンやパトリック・ガロワ、アンドレアス・ブラウ等々、そうそうたる方々が使っており、私も喉から手が出るほど欲しいフルートです。
ただし、下手な人が吹くとただのぼやけた音色にしかならないので難しいということがあるのですが。
また、金属のものにも負けないほど音色が通るものもあります。
いままでの材質のフルートには無い魅力をもっているのが木製のフルートです。
プラスチック製の楽器には将来性を感じます。というよりも、昔のドイツではリッププレートがプラスチックでできている楽器はかなり多かったので、また流行るときが来るかもしれません。
現在、特に有名なのがゴウフルート(Guo Flute)のプラスチック製の楽器で、目にすることが時折あります。
また、数年前に惜しくも亡くなられた櫻井フルートの櫻井幸一郎氏は、積極的に新素材によるフルートを製作されていました。
このような新素材による楽器が今後、さらに普及してスタンダードになり、より安価で丈夫な楽器が主流になればと願っております。
値段の高い楽器のほうが良い楽器であるかといえば、そんなことは全くありません。
低価格帯の楽器には吹きやすい、吹きづらいといった、コストの面を考えると仕方の無い完成度の問題はあるでしょうが、だいたい30万円以上する楽器にはそのようなことはほぼ無く、奏者と楽器の相性の問題になってきます。
材質関係はなく、良い楽器は良いし、高価な金の楽器でもダメなものもあります。
そしてそれは人それぞれ異なります。
楽器を選ぶに際して、より大きな音が出る、高音や低音が出やすい、レスポンスが良い、音程が良い等々、楽器に求めることはたくさんありますが、全てを持ち合わせた楽器はまずありません。
仮に1ヶ月程度試奏させてもらっても、楽器の本当の長所や欠点を知ることは難しいです。
人間同士でも、結婚してから相手の本当の姿を知ることがあります。
楽器も同じです。本当の長短所を知るには時間がかかります。
私が楽器を選ぶときに一番頼りにするのは、その楽器をただ好きかどうかです。
何年もかけて何十本ものフルートを試奏していると、1、2本は良いなと気に入る楽器があり、そのような楽器は私にとって当たりなのです。
良い楽器に出会えたら後は懐具合次第ですが、これが何よりも一番難しい問題です。
音楽音響学では、フルートの音色は材質によって変わるものではないそうです。
理論上は、材質でフルートの音色は変わらないけれども、耳で聴いた印象は確かに材質ごとの音色が違うと感じます。
材質による音色の違い
以下の材質ごとに異なる音色の傾向は、私の主観によるもので正しい統計をとったわけではないことをご了承ください。
木、銀、金の音色の違い。
シュヴェードラーフルートとベームフルートの違いも。
洋銀
モイーズは生涯、洋銀の楽器を使っていました。
しかも頭部管は、蚤の市で見つけたものを使っていたというから驚きです。
彼は最も安価な材質のフルートを演奏し、最も有名なフルーティストになりました。
彼の録音を聴いてみると確かに彼のフルートの音色は、洋銀特有のチャーミングな、悪く言えばチャーミングなだけの音色です(あくまでも楽器の音色の話であり、もちろん音楽解釈に関して言えば彼の演奏はただチャーミングなだけの演奏ではない。むしろ結構激しい)。
モイーズの時代から後には銀が主流となり、さらに金の楽器を持っている人が増え、最近では木製の楽器を目にする機会がかなり増えました。
銀
フレンチスタイルでは銀の楽器がよく用いられるような気がします。
最近聴いた演奏で、ヴァンサン・リュカのイマージュの出だしの ” ミ ” が、この世のものとは思えない美しさでしたが、彼の楽器は銀色です。
銀は大変華やかな音色ではありますが、使い手によっては大変やかましい耳障りな音にもなってしまうので、個人的には吹くのが一番難しい材質だと思っています。
一般的には純度92.5%のスターリングシルバーのものが主流ですが、さらに純度の高いブリタニアシルバー(純度95.8%)やピュアシルバー(純度99%以上)のものもあります。
同じメーカーの銀製品でも、純度ごとに実際には唄口のカットの仕方だったりテーパー(頭部管の管体の形)の具合が異なっていることが多く、一概に材質の純度の違いによる音色の差があるのかどうかは私には聴き取れません。
また、巻き管や、小さな粉末状の銀を高圧力で固める工法も、どの程度、音色や操作性の違いがあるのかは、残念ながら私にはハッキリとはわかりません。
金
主に9K、14K、18K、24Kがあります。
Kはカラットのことで、24Kはほぼ100%の金です。
最近では19.5Kという純度のものも主流になっています。
金は純度ごとに全くべつの材質であり、また同じ純度でも一緒に混ぜる金属次第で色も性質も違ってくるので、一概に言えません。
おおまかな私の印象では、金は銀よりものっぺりした音色で、時たま銀よりも音色が通らない演奏を聴くことがありますが、吹く人が吹けば大胆に音量の差をつけられ、より表現力豊かな演奏になりえます。
プラチナ
一時期ゴールウェイが使ったり、ヴァーレーズの『密度21.5』という、フルートを始めて打楽器のようにする奏法(キークリック)で有名でありますが、なかなかプラチナの楽器を使っているフルーティストに会う機会はありません。そしてプラチナの楽器の良い音を聴いたことが(私は)ありません。プラチナを買えるのなら金の楽器を買えばいいのにと思ってしまいます。
見た目的にもプラチナは銀に見えるし、音色もかなり鋭いし、この材質の魅力は何でしょう?
ただし、銀にプラチナメッキをしたものは本当に素晴らしい楽器が多いと思います。
木
クラリネットやオーボエのように主にグラナディラという木を使った黒いものが多いですが、たまに茶色いものもあります。ジャック・ズーンやパトリック・ガロワ、アンドレアス・ブラウ等々、そうそうたる方々が使っており、私も喉から手が出るほど欲しいフルートです。
ただし、下手な人が吹くとただのぼやけた音色にしかならないので難しいということがあるのですが。
また、金属のものにも負けないほど音色が通るものもあります。
いままでの材質のフルートには無い魅力をもっているのが木製のフルートです。
その他
プラスチック製の楽器には将来性を感じます。というよりも、昔のドイツではリッププレートがプラスチックでできている楽器はかなり多かったので、また流行るときが来るかもしれません。
現在、特に有名なのがゴウフルート(Guo Flute)のプラスチック製の楽器で、目にすることが時折あります。
また、数年前に惜しくも亡くなられた櫻井フルートの櫻井幸一郎氏は、積極的に新素材によるフルートを製作されていました。
このような新素材による楽器が今後、さらに普及してスタンダードになり、より安価で丈夫な楽器が主流になればと願っております。
値段に関して
値段の高い楽器のほうが良い楽器であるかといえば、そんなことは全くありません。
低価格帯の楽器には吹きやすい、吹きづらいといった、コストの面を考えると仕方の無い完成度の問題はあるでしょうが、だいたい30万円以上する楽器にはそのようなことはほぼ無く、奏者と楽器の相性の問題になってきます。
材質関係はなく、良い楽器は良いし、高価な金の楽器でもダメなものもあります。
そしてそれは人それぞれ異なります。
楽器を選ぶに際して、より大きな音が出る、高音や低音が出やすい、レスポンスが良い、音程が良い等々、楽器に求めることはたくさんありますが、全てを持ち合わせた楽器はまずありません。
仮に1ヶ月程度試奏させてもらっても、楽器の本当の長所や欠点を知ることは難しいです。
人間同士でも、結婚してから相手の本当の姿を知ることがあります。
楽器も同じです。本当の長短所を知るには時間がかかります。
私が楽器を選ぶときに一番頼りにするのは、その楽器をただ好きかどうかです。
何年もかけて何十本ものフルートを試奏していると、1、2本は良いなと気に入る楽器があり、そのような楽器は私にとって当たりなのです。
良い楽器に出会えたら後は懐具合次第ですが、これが何よりも一番難しい問題です。