シュヴェードラーフルートのタンポを自分で交換してみます。
古くなってそろそろ交換が必要になっていたシュヴェードラーフルートのタンポを、全て自分で交換してみました。
新しいタンポはヴァレンティノ社のグリーンバックというタンポを付け替えます。
タンポをキーに取り付けたらキーを楽器にはめてネジを締め、楽器調整用のリークライトで管の内側から照らしたり、細くて薄い紙をキーに軽く挟んで引っ張り、キーに隙間がないか確認します。
このようなLEDライトを使用しました。
1, ヴァレンティノ社のグリーンバックタンポについて
今回は、『円錐管フルートに新しい素材のタンポを使うと音色はどうなるか』、という実験的なコンセプトを元にタンポを交換してゆきます。
クラシカルやロマンチックフルート、多鍵キーフルートなどの古楽器には、フェルトのタンポが付けられる事が一般的です。
しかし今回は、ヴァレンティノ(Valentino)社から発売されているグリーンバックという合成タンポを使用します。
グリーンバックというタンポは、緑色の紙の土台にスポンジのような部分がのり、トーンホールと接触する部分にもう一層乗っています。
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ヴァレンティノ社のグリーンバックタンポ。 3層になっている。 |
グリーンバックの特徴として、安価で密閉性が高く、また耐久性に優れています。
そのため安価な楽器やレンタル楽器などに使われる事が多く、古楽器に使われることはほとんどないでしょう。
楽器が鳴りすぎるため、音色がきつくなってしまうそうです。
単純にトーンホールを密閉すれば良い音色になるわけではないところに、フルートの奥深さが感じられます。
ちなみに今回はアメリカの楽器店 JL.Smithからタンポを輸入しました。
注文から実際に商品が届くまで約1ヶ月かかりました。
税関の手続きも必要でした。
2, タンポを外す
まずは古くなったタンポを外します。
シュヴェードラーフルートのタンポは現代のフルートのようにネジで留めてあるのではなく、クラリネットのようにシェラックという、温めると溶ける接着剤を使用しています。
フルートの管体から外したキーを、楽器修理専用のバーナーやアルコールランプなどの火に近づけて温め、タンポとキーの隙間に専用の器具を差し込んで取り外します。
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取り外したタンポと新しいヴァレンティーノのタンポ |
取り外したタンポ(上)とヴァレンティーノの新しいタンポ(下)。
かなり劣化していました。
おそらく10年以上は交換されていないフェルトタンポは凸形に変形し、所々破れていました。
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シュヴェードラーフルートの古くなったタンポ |
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劣化したタンポと新しいタンポ |
3, キーに新しいタンポを取り付けます。
古いタンポを外し終わったら、キーの内側に残っているシェラックを取り去り、専用の接着剤を入れて新しいタンポをはめます。
古いタンポを外し終わったら、キーの内側に残っているシェラックを取り去り、専用の接着剤を入れて新しいタンポをはめます。
今回キーの接着剤はシェラックではなく、シェラックより低温で溶けるシリコン系の接着剤を使います。
接着剤を溶かす際に温めすぎ、タンポが熱くなってしまうとそり返ってしまい、キーをうまく塞ぐ事ができなくなってしまいます。
また楽器修理の素人の私の腕では、平らにタンポをはめる事が難しいのでなるべく熱を使わなくても簡単に調整できるようにしました。
ついでにキーを取り外した管体も、綺麗に掃除しておきます。
シュヴェードラーフルートにはこのような小さなトーンホールもあります。
左手の薬指のキーに連動しており、この小さいトーンホールが塞がらないと3オクターブ目のレが出ません。
このキーのタンポはオーボエ用の直径0.7mmのグリーンバックを使用しました。
タンポをキーに取り付けたらキーを楽器にはめてネジを締め、楽器調整用のリークライトで管の内側から照らしたり、細くて薄い紙をキーに軽く挟んで引っ張り、キーに隙間がないか確認します。
このようなLEDライトを使用しました。
もしキーに隙間がある場合には、またキーを管体から取り外しタンポを外して、キーとタンポの間に調整用の紙を切って入れます。
再度キーを取り付けてライトで照らし、隙間が無くなったら楽器を吹いてみます。
ちゃんと良い音が鳴ればそのキーは完成です。
全てのキーをちゃんと取り付けるまでに1週間かかりました。
次回は、キーのバランスを調整します。
再度キーを取り付けてライトで照らし、隙間が無くなったら楽器を吹いてみます。
ちゃんと良い音が鳴ればそのキーは完成です。
全てのキーをちゃんと取り付けるまでに1週間かかりました。
次回は、キーのバランスを調整します。