團伊玖磨作曲『フルートソナタ』について
團伊玖磨は『ぞうさん』や『花の街』、またオペラ『夕鶴』の作曲家として広く知られています。2021年は没後20周年となります。彼の『フルートとピアノのためのソナタ』は傑作でありながら、その知名度はかなり低いと言わざるを得ません。少しでも多くの方にこの名曲を知っていただければ幸いです。
演奏動画
こちらから演奏を視聴できます。
作曲の経緯
1987年、フルーティストの大和田葉子氏のアメリカツアーのために作曲されました。1987年2月11日、ワシントンD.C.のフランシス&アーマンド・ハマーホールにて、大和田葉子とロン・ウォーレンによって初演されました。
大和田葉子氏の演奏CDはアマゾンで購入可能です。
曲の構成と分析
2楽章で構成されています。第1楽章はソナタ形式、第2楽章は前半部分は主題と変奏、後半のAllegro部は3部形式で、中間部(練習番号12)には第1楽章の主題が用いられています。
全体的にフランス風の柔らかい和音が用いられつつ、5音音階のような音形が多用されています。西洋音楽にありがちな表現の暴力的な鋭さが抑制され、暖かい響きと繊細さが込められている作品です。邦人作曲家のフルート作品の中でも素晴らしい作品なので、もっとこの曲が演奏される機会が増える事を願っています。
楽譜のエラー
全音楽譜出版社の楽譜にはミスプリントが多いのですが、この曲も例に漏れずに何箇所もミスプリントがあります。この曲を初演した大和田葉子氏の演奏を参考に、ミスプリント箇所を挙げておきます。音名はドイツ式で表記します。シはH、♭シはBと表記されています。
- フルート パート譜第2ページの第3小節目の16分音符、印刷はc-f-c-Gとなっているが、正しくはc-f-c-F
- 練習記号4の2小節前の3/4拍子。第2拍目が付点2分音符になっているが、正しくは2分音符
- フルートパート譜の第8ページ、練習記号15の1小節前の2/4。第2拍の16分音符がc-Es-c-cとなっているが、正しくはc-G-c-c
- 同8ページ、一番下から1つ上の段の最初の小節(終わりから9小節前)。第2拍目がc-es-Desとなっているが正くはc-es-B
- 第2楽章、フルートのパート譜16ページの第3段目の最後の小節(練習記号14から12小節目)。第1拍の16分音符がh-fis-h-hとなっているが、大和田氏の演奏ではh-fis-Cis-Cisと演奏されている。
- ピアノ譜、第30ページ目の第3小節目。第1拍の裏拍はAではなくAsである。
伴奏
YouTubeに伴奏音源があるので、この曲に興味のある方は利用してください。