ブラームス作曲『交響曲第四番』第4楽章のフルートソロの解説(オーケストラスタディー)

 


オーケストラのフルートのオーディションを受ける際、ほぼ必ず課題曲になるブラームスの交響曲第四番、第4楽章のフルートソロの解説です。

この記事では楽譜とともに作曲された背景、分析、演奏のポイント、参考音源と練習用の伴奏音源を紹介します。





曲の成立



作曲年:1884〜85
初演: 1885年10月25日
マイニンゲン宮廷管弦楽団、ブラームス指揮
試演時は不評であったが初演は大好評であった。
古い要素を盛り込んだため、当時の作曲家の評価は賛否がはっきりと分かれている。

楽曲分析


パッサカリアです。

シャコンヌとも考えられますが、今日ではパッサカリアと考えることが多いと思います。

パッサカリアやシャコンヌは、一定のバス進行が繰り返され、その上に旋律が発展してゆく変奏曲の一種と考えるとわかりやすいです。

この楽章では以下の主題、バス進行をベースとして曲が発展してゆきます。
第4楽章冒頭。ピアノで弾きやすいように音を簡略化しています。

楽章を通してこのバス進行が繰り返されますが、これはバッハ作曲カンタータ第150番『主よ、われ汝を仰ぎ望む(Nach dir, Herrn verlanget mich)』の終曲のシャコンヌのバス進行をベースにブラームスが多少手を加えたものです。

BWV.150 終曲冒頭
https://imslp.org/wiki/Special:ReverseLookup/1408) より引用


演奏のために



ブラームス『交響曲第四番』第4楽章のフルートソロ
参考音源(ピアノ伴奏版)

ピアノ伴奏音源

ポイント1 テンポ


96小節あたりからソロに入るまでにリタルダンドをかけることは一般的であるが、指揮者によってはテンポをキープする場合もあります。

3/2拍子に入ってからは、大きく3拍でとると音楽に流れが生まれるでしょう。

第101小節以降は、極端に遅くならないようテンポを保つことを心がけましょう。


ポイント2 ブレス


最後まで1つのフレーズとして演奏するために、ブレスを取る際に注意する必要があります。

八分休符の度にブレスを取らないことがポイントです。

またブラームスの曲の場合、休符記号が書いてあっても音を長く保たなければならないことに注意が必要です。

音楽が途切れることなくクライマックスから収束していくまで常に緊張感を保ちます。

ポイント3 音の強弱


ソロの音量はpと書かれていますが、小さい音ではなく静かな音楽内容であるという意味に捉えると良いかと思います。

音量は小さすぎず、しなやかに強弱を変化させてゆきます。

クレッシェンド、デクレッシェンドがいたるところに書き込まれています。倚音(刺繍音も含む)上に書き込まれていますが、これは”espressivo記号”などと言えるような当時の典型的な表現方法です。

このような和声外音には速く緊張感のあるビブラートをかける必要があります。

ビブラートをコントロールすることがなかなか難しいのですが、間違っても解決音だけにかけないように気をつけてください。

参考:フルートの上手なビブラートのかけ方と練習方法まとめ+楽譜


備考として、第99小節にはクレッシェンド、デクレッシェンドが書き込まれていません。

一般的には前後と同じようにクレッシェンド、デクレッシェンドして演奏されているが、ブラームスの手稿譜を見ると、これはプリントミスではなく意図的に書き込んでいないように思われます。

この部分にはあえて強弱をつけず、静かに演奏することでその後のクライマックスに向かってより大きな表現が可能となるので、一つの表現の可能性としても練習してみてください。


ポイント4 スラー


第102小節の2拍目(H-Fis-G)はスラーが分けられていますが、作曲者自身の手稿譜を見る限りでは、ブラームスがアーティキュレーションに相当苦労していた形跡が伺えます。

ブラームスの手稿譜より。スラーのかけ方を迷っていた形跡がある。

上掲の楽譜には点線で正しいと思われるスラーを書きこみました。

おそらく他の音形と同じくH-Fis-Gは1つのスラーをかけた方が統一感はあります。

逆に区切る場合には、第103,104小節でも同じように区切る必要があるでしょう。

なぜこの箇所のみ、このようなアーティキュレーションを採用している物が出版されているのかは、調べてみましたが謎のままです。


備考


1886年、ゲヴァントハウス管弦楽団によるこの曲のライプツィヒ初演では、シュヴェードラーがソロフルート奏者をつとめました。

客席で演奏を聴いたブラームスは、シュヴェードラーが新しく開発した円錐管のシュヴェードラーフルートの音色を絶賛したとの記録があります。

筆者所有のシュヴェードラーフルート


筆者はシュヴェードラーフルートでこの箇所を吹いてみました。シュヴェードラーのように作曲者に感銘をおこさせるような演奏はできませんが、参考のために録音してみたので興味のある方は一聴してください。

上記の音源の2:00~です。念のためリンクも↓

https://youtu.be/iOlTvdXRCPg?t=2m

参考


Wikipedia『 ブラームス』

IMSLPのブラームス『交響曲第四番』の楽譜のページ




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