オーケストラで演奏していると感じる難しい事

 

オーケストラで演奏していると感じる難しい事

タイミングや音程、音色など、オーケストラで演奏していると、ソロとは違った難しさを感じます。

この記事では、普段オーケストラで仕事をしていて難しいなと感じることをまとめてみました。


タイミング


他の楽器の音を聴きながら演奏すると、自分ではぴったりのタイミングと感じていても客席では発音のタイミングが遅れて聴こえてしまいます。

特にフルートの場合では、ステージの前方で演奏している弦楽器を聴きながら演奏すると、遅れて聴こえてしまいます。

ピアノコンチェルトの伴奏をする場合などは、ピアノよりも少し前に入らないと演奏が遅くなったり、発音のタイミングが遅れてします。

フルートの音色の特徴として、演奏者と聴衆では音の出始めにわずかに差があるため、ほんの少しだけ早めのタイミングで音を出す必要があります。

どのくらい早めに入れば良いのか、慣れるまではなかなか難しいです。


オーケストラでは通常、数十人の演奏家が同時に演奏し、大規模な曲の場合には百人以上になることも珍しくありません。

人数が増えれば増えるほど、舞台上の人数は増えます。

人数が増えると当然のことながら、離れたところで演奏している奏者の数も増えます。

離れている楽器と一緒に演奏する時には、音を聴くのではなく指揮者の指揮棒に合わせる必要があります。


演奏が盛り上がって同僚のテンポが指揮者と少し異なっている場合には、指揮者か同僚のどちらに自分の演奏を合わせるか瞬時に判断しなければなりません。


リズム感


オーケストラの作品では、ソロの曲よりもリズムを正確に演奏しなければならない場合があります。

他の楽器の伴奏などで同じ音形を繰り返し演奏しているときなどにテンポが転んでしまったり、逆に遅くなってしまうとアンサンブルが上手くゆかない場合があります。

自分がメインの旋律を演奏していても、自由なテンポで吹きすぎると他の楽器とズレてしまいます。


リズムの感じ方は、楽器ごとに異なります。

弦楽器奏者は音形が跳躍するときに早めに演奏しがちですが、フルートの場合には逆に時間を多めに取ってしまいたくなります。

このため、弦楽器とズレが生じることもよく起きます。


メロディーを演奏している時に、旋律が上行形の場合はテンポが速くなりやすい傾向にあります。

付点音符のリズムは、相当正確に演奏しないと客席で聴くとおかしなリズムに聞こえてしまいがちです。

3連符などの連符も、ソロ曲を演奏する場合とは違い正確に演奏する必要がある場合がほとんどです。


しかしリズムを正確にしようとしすぎると、音楽としてはつまらない演奏になってしまう危険があります。

この辺りのバランス感覚は、経験で養うしかありません。

演奏者の永遠の課題の一つだと思います。


音量


オーケストラ作品でフルートを演奏する場合に、楽譜にpやppと書かれていても小さな音で弱く吹いてはいけない時が頻繁にあります。

逆にfやffと指示が書かれていても、強く吹きすぎてはいけない場合もあります。

フルートのソロのメロディーにpなどが書かれていても、たいていの場合には大きな音で演奏しなければなりません。

もちろん、弱く演奏しなければならない旋律もたくさんあります。


必ず総譜を確認しておき、どのくらい強弱をつければ良いのかはオーケストラ全体の響の中で考える必要があります。

pが書かれている場合、オーケストラの音量としてのpであり、フルートのpで演奏すると小さすぎて聞こえない場合がほとんどでしょう。

フルートの楽器の性質として、低い音域は客席には聴こえづらく、逆に第3オクターブの音色は鋭くなりがちです。

日頃から、力強い低音や、柔らかい高音を安定して演奏できるように練習しておく必要があります。

オーケストラで演奏するようになってから、私自身このような練習をしなければならないと痛感しました。

このような練習を自分のために作ったものは以下のリンクから公開しておりますので、興味のある方はご覧ください。

参考>アンブシュアのトレーニング


音色


音色に関しては好みの問題になりますが、フルートの場合、私は細い音色よりも太いほうが他の楽器との相性が良いと感じます。

細い音色の場合に良く起こるシャリシャリとした倍音の空気音は、他の楽器と一緒に演奏すると肝心のフルートの音程が不明瞭なことがあります。


一緒に演奏する楽器によって、音色を使い分ける必要もあります。

例えばソロを演奏している場合と、金管楽器と一緒に演奏している時とでは、音色を変えないといけないことは明白です。

クラリネットとコラールのような旋律を演奏しているときは、ビブラートを減らして太めの音色で演奏したり、弦楽器と演奏しているときはよりフルートらしい音色で演奏したりします。


音程


音程は、常に正確に演奏する必要があります。

フルートは音程を取ることがとても難しい楽器ですので、普段から練習の時にはチューナをつけておくようにしましょう。

楽器ごとに特定の音程がうわずりやすかったり、逆に下がりがちになリマス。

自分の楽器の音程の特徴を知っておくと、他の楽器と演奏していて音程がズレた時にもすぐに修正することができます。

最近では、市販のチューナーよりもスマートフォンのアプリの方が遥かに優れています。

私が普段練習で使っているチューナーアプリについては、以下の記事に書いております。

参考>楽器の練習に役立つiPad活用術


他の楽器と一緒に演奏するときに少しでも音程がずれていると、フルートの場合は音が震えて不快感をもたらしてしまいます。

特に他の楽器とのユニゾンになる場合、特にフルートの第3オクターブは上ずりがちです。

替え指を使って音程を合わせるなど、工夫することはオーケストラで演奏するためには必須の技術の一つだと思います。

参考>替え指について


ミス


一緒に演奏している同僚も人間ですので、誰もが本番で失敗することもあります。

普段の練習は、本番で起こりうるあらゆるミスに対する準備でもあります。


演奏中に冷静さが欠けるとミスの原因となり、思いもよらない場所で失敗します。

逆に、難しいと思っていたところは、本番ではたいてい上手くゆきます。

普段から、一見簡単そうに見える箇所も入念にさらっておきましょう。


例えば、長い休符の小節が続いたあとなどは、演奏するタイミングを間違えてしまうことがあります。

音源を聴きながら、休符の小節もしっかりと数える練習をしておきましょう。


もし本番でミスをしてしまっても、クヨクヨと後悔せず気持ちをすぐに切り替えましょう。

大抵のミスは、本人にとって大きなミスでも、他人にとってはどうでも良いことがほとんどです。

仮に演奏を止めるくらい大きなミスをしてしまっても、その時は仕方ないとあきらめましょう。

次回から二度と、そのようなミスを起こさないように改善策を考えれば良いのです。


指揮者


指揮者の役割の一つは、演奏者に共通のテンポを示す事です。

演奏者それぞれに音楽の感じ方や解釈は違いますが、解釈に統一感を与えて演奏にまとまりを作るのが指揮者の役目です。

基本的には指揮者の指示は守らなければなりませんが、指揮者の技量が足りないとオーケストラが判断した場合、指揮者の指示通り演奏される度合いは減ります。


自分と指揮者と曲の相性は大切です。

どんなに自分と相性の良い指揮者でも、曲と相性が合わなければ良い演奏をすることが難しくなります。


私の所属するチェコフィルの場合には、チェコの作曲家の作品、特にドボルザークやスメタナの作品の解釈は長い伝統があり、こう演奏しなければならないとある程度決まっています。

伝統に反する指示を指揮者がした場合には、指揮者の要求が演奏会では従われないこともあります。


演奏中に指揮者と駆け引きをすることもあります。

例えばソロの旋律を演奏している場合、指揮者はテンポを合わせてくれることがありますが、指揮者の棒につけなければならないこともあります。


まとめ


オーケストラで演奏するためには、テンポ感や音程感覚など、演奏の客観性がかなり必要になります。

客観性を持って演奏するためには、決して自分の演奏が本当に正しいのか常に疑問に持って演奏する、音楽に対する真摯な姿勢が必要になります。

同時に、自分の演奏が正しいと自分で確信を持って演奏できるよう、普段から注意深く練習しておきましょう。



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