一般的なフルートの運指について


(訳注:以下の「一般的なフルート」とは、今日のベーム式フルートの事ではなくベーム式以前のものである。)


繰り返しになるが、フルートの確実なテクニックに到達するためには、特に確実な運指の容易さが関係し、使用される楽器が調整され、何よりもまず第1に楽器の音程が完全であることが前提であると、私はすでに示した。(参照:『フルートの調整に関していくらかの所見』


楽器の音孔と運指


明るく力強い音色を作る事に限って楽器を考慮すれば、キーを開ける時には可能な限り少ない音孔で吹かれるべきである。替え指やフラジョレットの用途のために用いるのは、前述の音孔の位置である。一連のフレーズを均等に演奏するために必要なことは、閉じたキーを開ける事をはっきりと意識する事である。

教師は以下の事に注意を払う。生徒に替え指とフラジョレット音を教える前に、まずは標準的な指使いに取り組む。これらの技術的な助言は、音の均一性が上達し生徒と教師に喜びをもたらすことで、有用である事が明らかになる。欠点のない演奏に必要な、本当に滑らかに標準音と替え指の音を融合するためには、1年の注意深い修練が必要であり、まず初めに取り組むべき練習を乗り越えることができれば、さらに困難な要求ができる。


次の練習に私は運指記号を記した。音程の完全性を目的にかなっているよう、また私の生徒たちが使用しているものである。


C,Cisの運指


前提として、学習者はすでに完全に運指表(表1:主な運指)を信頼していれば、替え指(表3)のcに気がつくであろう(訳注:当時の一般的なフルートのcの運指は2,4,5,6,□。詳しくは、シュヴェードラー著『フルートとフルート奏法』の付録を参照)。
CisとDesは音を完全にするため、Cキーを押さえる。(訳注:当時の楽器は左手親指にCキーがあった。右の図参照)


初心者はすぐに忘れてしまうことを私は知っているので、あらゆるところに記号を書き込んでいる。


これに合わせて述べなければならないのは、1897年にライプツィヒのK.クルスペの、Cキーを抑えなくても適切なcisやdesが演奏できる"音のメガネ(Tonbrille)"である。

(訳注:左の図の赤丸で囲ったところが「音のメガネ」である。
以下のリンク中断「1898 model reform flute by G. H. Hüller」では、この音のメガネの写真を見る事ができる。参考:http://www.oldflutes.com/articles/reform.htm )



これらの状況は、以下の例のような箇所、





これらのパッセージを演奏しやすくするだけでなく、またさらに音のメガネは異なる2音を洗練し、例えばhとcisや、cisとdisのトリルを、完全な音程で演奏する事ができる。




3オクターブ目のcisは2の運指を私はほとんど用いることはない。


それに反してdesでは用い、

特に以下のような場合には多く用いる。



Fの運指


Fの場合には私は長いFキーを使用し、記号を書き込み、記号の場合には小Fキーを用いる。一般に長いFキーを適用する規則は、上行形の跳躍する箇所で用いる。


例外は以下のような形である。


小Fキーの音孔は、Disキーのようにほとんどの音の響孔(訳注:標準の音孔よりもより響く孔)として用いられる。初心者にとって小Fキーを大げさに運指に用いるという、私からのわざとらしく要求は、困難の原因とはならない。

他の運指をすでに習得した奏者にとって、Fキーの利用することは初めはもちろん難しい。しかしながら大抵3、4週間の練習で困難はなくなる。

もし楽器製作家のキーが適正であり、ローラーが上下になめらかに動かす事ができれば、速い箇所でもキーの動きが妨げとなる事はない。


Fisの運指


1、2オクターブ目のfisの音孔は、cisと、fに配慮して、楽器製作家は十分に適した大きさに開ける事ができない。それゆえ、Fisキーは響孔としてではなく、本来の音孔である。

Fisキー無しのfisは、全ての一般的なフルートにとって音程が低すぎ、したがってその利用は必要な箇所のみである。訓練を積んでいない、または積んだ奏者にとって、まだおそらくfisの音程が完全であるために努力しなければならない。

確実で新しい自動的なFisメガネ(Fis-Brille)は、楽器製作家K.クルスペが、私の指示を適切に取り入れたものである。


Esの替え指


Esの運指では、Gの1の指を用いることで、素早くレガートで演奏できる。

Fの替え指


3オクターブのfの替え指は容易なレガートで演奏する事ができるので、cesやf-dのレガートに応用できる。











Fisの替え指


Fisの運指2はよりレガートであることは明白である。



また特に私が好んでこれを利用するのは、gesの時である。

 Gの替え指


Gの替え指2は音程が高いので、ただ速いパッセージの中でのみ用いられる。しかし以下の場合にはほとんど用いらなくても不自由はない。



Gisの替え指


Gisキー2は音程が低く、それゆえAsのための運指として利用される。速いパッセージやレガートで良い役割を果たす。



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