アンブシュアについて

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アンブシュア


 アンブシュアとは、フルートの歌口の位置に唇をあてがった時に、容易な発音ができる口の形のことである。さらに唇は、フルートの音色が完全で心地の良い、またあらゆる感情を表現することができるよう働く。

もし口を閉じた時に上下の唇が特に飛び出ていなければ、フルートの音を出すためにとても向いている。あまりにも飛び出ていたり横に広い唇は、薄すぎる唇と同様にフルートを演奏するためにはあまり適していない。極端に厚い、もしくは薄い唇は低い音域や高い音域を発音するために不利である。

 正しい音の出し方は次のようにする。歌口とキーの穴は一直線上にまっすぐにセットし(『楽器の持ち方』を参考に慎重にやってみよう)、リッププレートを唇に当てて、歌口をほんのわずかに下唇で覆い、端の隆起に唇を軽く触れる(『歌口』を参照のこと)。
あごにリッププレートの曲がった部分を、下の歯の根元にすべらないようにしっかりと当てる。下唇の赤い部分はそれゆえ、楽器を保持している間も柔軟でなければならない。

左:図6、正しいアンブシュア
右:図7、間違ったアンブシュア
(図6、下唇が自由で正しいアンブシュアを具体的に示す。 フルートを管にあてる。図7ではフルートを内側に向けた誤った例を挙げる。頭部管を当てた後、フルートと下の歯で下唇を挟んでしまう。)


楽器をあてた時、唇がほとんど1直線になるようにすることは、音を発音するための前提条件になる。息を吸い込み、すべての指を音孔にあて、口もとをいくらか引いて上唇をほぼ真ん中にし、上唇と下唇との間に小さな隙間を作り、舌の助けを借りながら(『舌つき』参照)息を歌口に導く。高い音や、か細いcisが現れた時に、ほとんどの場合にはこれらを試してみることで成功する。さらに、練習として上から音孔を一つづつ閉じてゆき、上下の唇が動かないように厳密に注意を払う。
cisから自然な音の並び、さらに低い音域まで学習者は唇が動かないかまず見て覚えなければならない。これらの音を出すために必要なキーを閉じることに苦労するなら、大抵右手側のどこかの音孔がしっかりと閉じられていないからである。それは低い音を出すために妨げとなる。もっと楽なのはもっと上の音域、2、3オクターブを発することである。しかし自然なことだが、初心者にとっては、これらの音を発音するために息を強く吹きかけなければならない。


アンブシュアのための練習方法


毎日、以下の練習を音の出だしにかなり気を付けて練習すれば、さらに音の質が良くなる。注意深い練習をすれば、力強い歌うような音色は主に、弱いあるいは強い息遣いではないことを体験できるだろう。舌を正しく用い、唇のしなやかさであること、またとりわけそれにつながる口角の筋肉の力や、適切な角度で口から出た息が歌口の向こう側のヘリに触れフルートの管の中に入ることが大切である。正しい感覚を得るためには、単純に学習者が経験で覚えるしかなく、理論で学ぶことはできない。しかしながら、低い音域の音は、ほとんどまっすぐな息の流れであり、高い音ではより水平の息の流れとなることに触れないわけにもゆかない。(※訳注:低い音域や高い音域を吹いている時に、鏡で口もとを見てみると、リッププレートが息で曇り、息の流れの形を見ることができる。)



唇と口の穴は息を吹いている間、音を出すために互いに統合してほとんど一つの道具となる。その調和のとれた作用と、それによって確実に息の流れを制御することができる。

音程を変える最も大きな点は、フルート奏者の唇の緊張である。唇の緊張は、ちょうど歌手の声帯のようであり、緊張したり弛緩することによって、音が高くなったり低くなったりする。熟練したフルーティストは唇を少し広げて緩めたり、細くし、そのことで唇を緊張、弛緩させる。初心者の訓練のため、また口角の筋肉のために確実に有用なのは、『フルートの音域』で触れた倍音の項を練習することである。これらの練習で常に意識するのは、唇を広げたり狭くしたりする際には、楽器をねじったり唇を前後に動かすことを避けることである。意のままにできる良い楽器を持っていれば、唇を前後に動かすことは主に、オクターブを変える時のみ必要なだけである。下顎を過剰に変えることはまた、特に低い音域の音と高い音域の音の大きな跳躍をレガートで演奏する時でだけある。不確実な音の出し方と不安定な音程はそのことに関連する。最も良くないな印象は、奏者がフルートのアンブシュアのために頭を下に向け、そのせいで上唇がリッププレートに触れてしまうことである。


アンブシュアが乾く


以下のことでアンブシュアに影響が起こる。タバコを吸うとアンブシュアから柔軟性と弾力を奪うので特に息が短くなる。また演奏前に酸っぱいものや脂っこいものを摂るとアンブシュアで苦しむことになる。また果物も勧められない。お茶を飲むと粘膜を強く刺激し、唾液が出る。
乾燥、寒い冬や嗅ぎタバコなどは唇が割れてしまう。下で湿らせ柔らかくすることですぐに治療できる。またリップクリームやワセリン(Baseline)、羊毛脂(Lanolin)を塗る。これらは1日のうち何度か塗り、寝る前にも当然塗る。
良い音は湿った唇からでしか作ることができない。それゆえ奏者は、演奏している間に舌で唇を湿らせる。しかし、幅広く目立つように舐めてはいけない。また舌を出しすぎてはいけない。

唇の湿っているためには、唾液腺が適切な量の唾液を分泌することである。もし例えば昼食を食べ過ぎてしまえば、分泌は起こらずアンブシュアにとって悪い。そのような時は、はちみつやペパーミントの飴、または砂糖をなめれば必要な唾液の分泌をもたらす。また特に粘膜が炎症を起こしていると乾く。これらに苦しんでるものは、アンブシュアでも苦労する。なぜなら、唇を充分に湿らせることができずに、特に低い音域をうまく演奏することができないからである。良いアンブシュアはそれらが治ってから現れる。歯茎や舌の意味のないくらい小さな炎症も、演奏には煩わしい。友知草やミルラチンキが治療に用いられる。
虫歯の場合には、有能な専門的訓練を積んだ歯医者に行くこと。もし安くても腕の悪いヤブ医者に行くと治らない。





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