確実なテクニックのための指の練習
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指の動きの妨げとなる原因を、通常の方法よりもはるかに詳細に検討することで、正確なリズムで指を動かす技術を確実に獲得できる。確実なフィンガーテクニックとは、全ての指を同時に素早く、要求された速度で正確に意識して動かすことができる能力である。
ところが、いくつかの指は同時に、思い通りに動かない。これらの原因は指の筋力と訓練、とりわけ中指、薬指、小指が不足しているからである。このためには、神経と筋肉をコントロールする訓練をしなければならない。
2本の主な神経索が手の筋肉を動かす。この2本の神経を均一に訓練すれば、5本の指すべてが安定して動かすことが可能となる。しかし不完全な練習方法では、1本の指を練習する際に、たいてい隣りの指も一緒に動いてしまう。そのためには、難しい3本の指のうちの1本を規則正しいリズムで軽く動かし、少しづつ速くすれば、嫌でもぎこちない指を規則正しく動かす事が可能となる。
上の図では、指の腱が異なる伸び方をしていることが描かれている。3、4、5の指の腱が集中しており、またこのせいで3本の指が動きづらい原因となっている。
いつでも絶え間なく、運指に必要な全ての指を、均一にムラ無く練習することが重要である。そのためには、様々なトリルや普段から全調を練習しなければならない。その際、若くて柔軟な、まだ成長途中の手には、特別に何かをしなければならないという事は無く、音楽的に練習をすれば、十分に完璧なテクニックを確実に手に入れる事ができる。しかし、歳をとった人や、時々若者にとっても、機敏さがなくなり、手の関節のきつい動きがぎこちなくなる。指の造りに異常が見られる人には、そのことが原因で、熱心な練習にもかかわらず滑らかで均一なトリルや正しいリズムで、全ての指を素早く動かして演奏する事ができない。
いくつかの音のつながりは適切でも機敏でもなく、指の不正確さはさらに悪化してしまい、穏やかさやリズムの確実性を慌ただしく破壊してしまう。しかし、このような不都合な状態は、良い成果となりうる。速いだけのテンポで行う楽器の単なる練習よりも、辛抱強く行う毎日の指の練習によって克服できる。
次の練習は、家で楽器を使って、もしくは机、ステッキの端などを利用し、あらゆるところで行う事ができる。
まずは一本ずつ指を均等に同時に動かし、だんだん速くする。この練習の間、指は本当に静かに動かさなければならない。動きにムラがある事にすぐに気づくかもしれないが、数日、もしくは数週間後には指をほとんど均一にハキハキと動かせるようになるだろう。
その上で、それぞれ1本の指を動かしトリルの練習をする際には、正確なリズムで均一に練習しなくてはならない。
以下の指を同時に上げて練習する。
2+3、3+4、4+5、1+5、3+5
次に、以下の指を交互にあげ、片方の指をあげる時はもう一方は下げる。これも正確なリズムで行う。
2+3、3+4、4+5、1+5、2+4、3+5
この練習はそれぞれの指を全て同じ長さで行う。そうすることで、元から器用な指が不器用な指より常に動きやすくなるのでは無く、不器用な指が遅れを取り戻し均一になる。
初めこの練習をするときには、何本かの指には疲れるだろうが、数日後には軽やかに、確実に、また静かに演奏できるようになる。
しばしば私が見てきたのは、フルートを吹く際に、はじめから入念な規範にのっとった指導がかけており、親指(問題になるのはここでは左手の親指)、もしくはほかの全ての指が楽器を演奏する際に動き、ぎこちなく、Bキーを自由に押さえることができる代わりにフルートの管を後ろに滑らせるという、ただ疲れるだけの方法であった。その他にまずいやり方として、親指をキーに添え、左の肘をあげることでキーを開くというやり方であった。この親指の硬さは大抵は楽器の構え方の間違えから生じ、楽器をただ手のみで支えているからである。
コントロールの効かないBキーを用いる事は、楽器を支えるためには必ずしも必要ではないように、また顎で楽器を支える事もないのでこのようなことが生じる(『楽器の構え方』参照)。
楽器を構えた際の左手の親指の練習は、トリルの動きのためにキーから指を離しても良い。
次の分散和音の例:
この例を、親指をフルートの管から離して使用する事無く練習しなければならない(※訳注:当時の楽器は現代のものと指使いが異なり、左手親指のキーを押すとBが出た。これらの練習は、当時の楽器の指使いでは親指を離して演奏する事が可能であるが、現代のベーム式では不可能)。
ここで書いた指の練習は、一時的に暇な時の練習として特に勧められる。また、ぎこちなく、敏捷性にかける指が、再び柔軟で良くコントロールできるようになりたいものにも勧められる。
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フィンガーテクニック
指の動きの妨げとなる原因を、通常の方法よりもはるかに詳細に検討することで、正確なリズムで指を動かす技術を確実に獲得できる。確実なフィンガーテクニックとは、全ての指を同時に素早く、要求された速度で正確に意識して動かすことができる能力である。
ところが、いくつかの指は同時に、思い通りに動かない。これらの原因は指の筋力と訓練、とりわけ中指、薬指、小指が不足しているからである。このためには、神経と筋肉をコントロールする訓練をしなければならない。
2本の主な神経索が手の筋肉を動かす。この2本の神経を均一に訓練すれば、5本の指すべてが安定して動かすことが可能となる。しかし不完全な練習方法では、1本の指を練習する際に、たいてい隣りの指も一緒に動いてしまう。そのためには、難しい3本の指のうちの1本を規則正しいリズムで軽く動かし、少しづつ速くすれば、嫌でもぎこちない指を規則正しく動かす事が可能となる。
指の腱のつながり方 |
上の図では、指の腱が異なる伸び方をしていることが描かれている。3、4、5の指の腱が集中しており、またこのせいで3本の指が動きづらい原因となっている。
指の練習する際に気をつける点
いつでも絶え間なく、運指に必要な全ての指を、均一にムラ無く練習することが重要である。そのためには、様々なトリルや普段から全調を練習しなければならない。その際、若くて柔軟な、まだ成長途中の手には、特別に何かをしなければならないという事は無く、音楽的に練習をすれば、十分に完璧なテクニックを確実に手に入れる事ができる。しかし、歳をとった人や、時々若者にとっても、機敏さがなくなり、手の関節のきつい動きがぎこちなくなる。指の造りに異常が見られる人には、そのことが原因で、熱心な練習にもかかわらず滑らかで均一なトリルや正しいリズムで、全ての指を素早く動かして演奏する事ができない。
いくつかの音のつながりは適切でも機敏でもなく、指の不正確さはさらに悪化してしまい、穏やかさやリズムの確実性を慌ただしく破壊してしまう。しかし、このような不都合な状態は、良い成果となりうる。速いだけのテンポで行う楽器の単なる練習よりも、辛抱強く行う毎日の指の練習によって克服できる。
どこでも出来る指の練習方法
次の練習は、家で楽器を使って、もしくは机、ステッキの端などを利用し、あらゆるところで行う事ができる。
まずは一本ずつ指を均等に同時に動かし、だんだん速くする。この練習の間、指は本当に静かに動かさなければならない。動きにムラがある事にすぐに気づくかもしれないが、数日、もしくは数週間後には指をほとんど均一にハキハキと動かせるようになるだろう。
その上で、それぞれ1本の指を動かしトリルの練習をする際には、正確なリズムで均一に練習しなくてはならない。
以下の指を同時に上げて練習する。
2+3、3+4、4+5、1+5、3+5
次に、以下の指を交互にあげ、片方の指をあげる時はもう一方は下げる。これも正確なリズムで行う。
2+3、3+4、4+5、1+5、2+4、3+5
この練習はそれぞれの指を全て同じ長さで行う。そうすることで、元から器用な指が不器用な指より常に動きやすくなるのでは無く、不器用な指が遅れを取り戻し均一になる。
初めこの練習をするときには、何本かの指には疲れるだろうが、数日後には軽やかに、確実に、また静かに演奏できるようになる。
構え方に対しての注意点
しばしば私が見てきたのは、フルートを吹く際に、はじめから入念な規範にのっとった指導がかけており、親指(問題になるのはここでは左手の親指)、もしくはほかの全ての指が楽器を演奏する際に動き、ぎこちなく、Bキーを自由に押さえることができる代わりにフルートの管を後ろに滑らせるという、ただ疲れるだけの方法であった。その他にまずいやり方として、親指をキーに添え、左の肘をあげることでキーを開くというやり方であった。この親指の硬さは大抵は楽器の構え方の間違えから生じ、楽器をただ手のみで支えているからである。
コントロールの効かないBキーを用いる事は、楽器を支えるためには必ずしも必要ではないように、また顎で楽器を支える事もないのでこのようなことが生じる(『楽器の構え方』参照)。
楽器を構えた際の左手の親指の練習は、トリルの動きのためにキーから指を離しても良い。
次の分散和音の例:
この例を、親指をフルートの管から離して使用する事無く練習しなければならない(※訳注:当時の楽器は現代のものと指使いが異なり、左手親指のキーを押すとBが出た。これらの練習は、当時の楽器の指使いでは親指を離して演奏する事が可能であるが、現代のベーム式では不可能)。
ここで書いた指の練習は、一時的に暇な時の練習として特に勧められる。また、ぎこちなく、敏捷性にかける指が、再び柔軟で良くコントロールできるようになりたいものにも勧められる。
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