フルートの起源と発展5 テオバルト・ベーム

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テオバルト・ベーム(Theobald Boehm)

ベームのフルート改良と、特徴



テオバルト・ベーム


完全な音響学と数学の原理に基づいてフルートの製作を根本的に大きく作り変えたのは、寝る間も惜しんで努力する楽器製作家であり、かつフルートの名手でもあったミュンヒェンのテオバルト・ベーム(Theobald Böhm)であった。彼は1794年4月9日に生まれ、1881年11月25日に没した。彼は音響学上のフルートの欠点を取り除くために、1832年に全く新しいキーシステムの楽器を生み出した。彼がリングキーフルートと呼んだこの楽器は、円筒管の頭部管を持ち、一番低いCに向かって円錐形に細くなり、Cから楽器の一番下までまた膨らんだ管体であった。

上:木製ベームシステムフルート。円筒管
下:金属製ベームシステムフルート


これらの形状の管をベームは様々な理由から満足せず、物理学上の成果をもとに制作した幾つかの試作の末、円筒形の管体が気柱の振動には完璧で適切であり、円錐管から完全にやめた。そして円筒管の管体ために、上部が狭く下に向かって広がっている頭部管を利用した。これらは「ベームフルート」という名前で知られ、特にフランスやイギリス、アメリカで多くの熱心な支持者を生み出した。

ベームの改良


 完全に物理学的立場から考察すると、フルート製作技術はベームの発明によって意味のある進歩を遂げた。主に次の点である。

1、他のフルートは円錐管であるのに対し、ベームフルートは円筒管であった点。

2、他のフルートは指孔の位置に疑問があったのに対し、ベームフルートは音響学に基づいており、それは半音階において最も理にかなっていた。


これらの事情は、しかし特に円筒形のフルートの管体に、全ての音が同一の強さであることに影響し、意味のない唇の変化をもたらした。そして利点は残念ながら単調な音色と、人工的な、とても機械的な明敏さを示したが、しかしかなり正確にキーを調整しなければならなくなった。


キーシステムに関して、ベームは次のように述べている。

「メカニックな部分の観点から一般的なフルートの欠点に関して言えば、私は完全にフルートを新しく作り出すことを促されなかっただろう。結局一つの音を出すためこの指使いや他の指使いをすることはどうでも良いことである。そして演奏している時に、どのキーシステムにおいて逃れられない難しいことは、熱心な練習を通じて克服される。全ての楽器において、優れた名手たちがそれを証明している。」

彼の意見はすなわち、こうである。「どのみち、どんなキーシステムでも、練習が名手を作る!」


ベームシステムの影響


ベームフルートにおいては、手本のような、均一に配置された厳密な音孔がある。それを一般的なフルートにおいてどの程度統一された音孔の配列にするべきか、という議論が起こる。新しい時代まで、こういうことは全くなかった。ほとんどの楽器製作家は、それぞれの方法や経験から、楽器の音孔の位置を考え決めていた。そして指使い表や仕様書なしに世の中にそれらを送り出していた。受取人はどのように新しい楽器が出来上がったか確かめなければならない。全ての可能なキーシステムの指使いの一覧の中から、新しい楽器にあった指使いを試さなくてはならない。大抵、楽器製作家と奏者の間には大きすぎる意見の違いがあった。

一つの音にはたいてい、5から10通りの異なる指使いがあった。いわゆる"技術的指使い(Kunstgriffen)"と呼ばれる、吹きたいように吹かれる指使いは馬鹿げており、無意味に感じられた。ベームフルートにおいてはそれらは大幅に制限された。ベームフルートの製作家はこう言う、「ここにフルートと運指表がある、試してごらん!」。それは明らかにベームフルートの長所であるが、それはどう見ても円錐管フルートでも同じように、調整された指使い表を持つことはできる。指使いの明快さは技術と音の完全性の母である。良い通常のフルートでもベームフルートのように良いテクニックを演奏できると、信じるものはすぐに発見することであろう。フルートの作曲家はベームフルートのためだけに曲を書きいたが、私にとってはあまりなじまないものばかりであった。認めなければならないのは、ベームフルートを始める初心者には(おそらく)、円錐管フルートよりも容易であるということである。しかし初球を終えた音楽家にとって確実なのは、楽器において難しいことは楽器のことよりもその他のことであることが少なくない。


円錐管ベームフルート


円筒管においてはPPやmfの発音は容易であるが円錐管では難しい。逆に空気が大量に必要なffの場合に、円錐管では無理をせず大きく素早く出すことができる。ベームシステムを持つ円錐管が作られると同じく、間違った構成の円筒管からなる古い指使いのフルートも作られた。円錐管ベーム式フルートは1832年に生まれた。ベームフルートを吹きたいものはそれを用いたが、1842年には円筒形のものが作り出された。大きなトーンホールは円錐管のフルートに都合の悪い影響を与えたため、本当の円錐管のベームフルートは生産されなくなった。同様に不利なリングキーフルートも、指を強く抑える必要があり、演奏に置いてそのような欠点はカヴァードキーのベームフルートには見られなかった。古い一般的なフルートからベームフルートに替えたものは、Gisキーが閉じており(クローズドGis)、Bにキーが付いているものを用いた。


ベームフルートの音色について判断すること、それは意味のないことである。なぜなら、それは完全にそれぞれの好みの問題であり、また一方で、ある物は金属、他方は木で作られているからである。私の意見では大きな変更点はフルートの管体の円錐管の個性である。円筒管は特に脆弱(zart)な、もしくはよく響く(sonoren Klange)音色である。 それゆえ、円筒管ベームフルートの使用は、奏者の芸術的目的の音色の面で、良い円錐管フルートよりも限度がある。

円筒管の場合、容易に音を発音するためのテクニックが上達することを、認めよう。しかしより芸術的な到達にはこの楽器でも他の楽器のように難しい。なぜなら楽器の技術的利点が少なくなればなるほど、かえって身体の性質や真剣な研究、そして奏者の深い感情などの才能が関わってくるからである。

私見によれば、ベームフルート(円筒管)を使うことを好む芸術家は、快適な演奏の観点から用い、良い円錐管フルートを使うものは、さらに聴衆の心をつかむ。




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