フルートの起源と発展1 フルートの誕生〜初期のフルート

フルートの誕生


 確実に考えられる事はフルートは最も古い楽器であると思われ、少なくとも最も古い管楽器である。フルートが誕生したのは、自然から人間がフルートの発明を学び獲得したと言えるであろう。
人里離れた森を歩く狩人か羊飼いが、鳥の歌声や野獣の鳴き声をまねして、風の中でざわめくアシや自身で射止めた動物の骨をくりぬいたものを吹き鳴らし、それが最初の楽器になった。


初期のフルート


 最も単純なフルートの形は、真直ぐな一本のアシや骨であり、その筒の片方の端は歌口としての役割を果たしていた。
異なる音やメロディーを得るために、異なる長さの管を連ねた(訳注:現代のパンフルート)。
Obidはフルートをギリシャ神話のパン神の発明であるとみなした。

 まもなく人は、一本の管に穴をいくつもあけトーンホールを作り、それを開閉する事で管を任意の長さに調節して音高を変える事を思いついた。

インドの蛇使いは今でもそのような単純な楽器を制作する。
竹の管に七つのトーンホール、その管端は唇をよりよく当てメロディーが演奏しやすいようにいくぶん斜めに切られている。
世界一周旅行を好む者から私のもとにそのような楽器が届いたが、その楽器から推測されるのは、そのフルートは垂直に構えられ、上部の管の端の穴を単純に歌口として用いられるということである。

古い描写には今日のクラリネットのように縦に吹かれているように描かれて見える。
昔の著述家も、横笛の事は記していない。


ケーンフルートとシュナーベルフルート


 ケーンフルートやシュナーベルフルートが一番初めのフルートであるという仮定が間違いであるということは確実だ。
ケーンフルートが作られるよりももっと前に、単純な穴が上下にあいた管の笛が存在した。
その楽器を改良し、さらに少なくない努力と、楽器が要求する息のコントロールの難しさを解決し、快適で容易に演奏するためケーンフルートが発明されたのであろう。

ヘブライ人たちがこの笛を発明をしたようである。
彼らは2種類の笛を持っていた。小さいチャリル(chalil)と大きいネカプヒム(nekabhim)である。


ギリシャ人のフルート


ギリシア人たちもさらに単純な2本の笛を用いた。
2本の管の長さは同じ、または異なり、急な角度の円錐形の管であった。
そして2本の管の上の端はお互いに接合され、1つの歌口になっていた。

 ギリシャの様々な地域の名前も、例えばドーリッシュ(dorische)、フリギッシュ(phrygische)、リディッシュ(lydische)、チレニッシュ(tyrrhenische)フルートのように、その地域で作られたフルートに伝わった。

チレニッシュフルートは特に大きな太い音色で知られている。
Böotien(中部ギリシャの地方)の町Theben出身のAntigenidesはフルートの穴の数を増やし、大きさにより少年笛(Knabenflöten)、男笛(Männerflöten)、処女笛(Jungfernflöten)と名付けたフルートでさらに多くの調で演奏した。
また、湾曲した管から制作したフルートをBlagiaulosと呼んだ。
 




 我々の地域ドイツにおいて、それら古いケーンフルートやシュナーベルフルートは、Flûte douce やFlûte à bec、BlochまたはBlockflötenとして知られる。
これらは今日でもパイプオルガンのフラジョレット音栓に使われ、子供のためのリコーダーとしても用いられている。



Syluestro di Ganassi:シュナーベルフルート演奏の手引き


 シュナーベルフルートやリコーダーの演奏の手引きに、ヴェネツィアの王宮楽団の楽器製造家Syluestro di Ganassiを挙げる。この興味深い、1535年に刊行された、著者自身の手で印刷された本はとても稀少で、今日では3冊のサンプルしか残っていない。
一冊はイェーナ(Jenaドイツ東部チューリンゲン州)大学図書館が所有しており、その他、ヴォルフェンビュッテル(Wolfenbüttelドイツ北部ニーダーザクセン州)王立図書館、3冊目はイギリスの個人が所蔵している。

この古いフルートのための手引書の扉には、木版画の縁の中に3本のシュナーベルフルート、ならびに2人の歌手が描かれており、
『Opera Intitulata Fontegara ‖ La quale insegna a sonare di flauto cho.  tutta l’arte opportuna a esso instrumento ‖ massime il diminuire il quale sara utile ad ogni instrumento ‖ di fiato et chorde: et anchora a ‖ chi si dileta di canto, composta per syluestro di ganassi dal fontego sonator d. la Ⅲ ma Sa. D. V.』
(訳注:フルートの演奏法を指導する”Fontegara”というタイトルの作品は、この楽器(フルート)を学ぶために必要なことが、全てこと足りている。特に、装飾法については、すべての管楽器、弦楽器、さらには歌い手にとっても、役に立つ。fontego sonator より、syulestro di ganassiへ献呈する)というタイトルである。

 Ganassi以降、シュナーベルフルートは13の音からなる音域を獲得し、そのうち9つの音は穏やかな、残り4つは強い音を産んだ。彼はさらに20の音について語り、9つの低い音と、7つの中音、4つの高い音に区別した。このフルートの音域はデスカント(高音部)はgからe2まで、テナーフルートはcからa1まで、バスはFからd1までと定めた。

 著作の中にある練習曲は奇妙な印象を作り出す。ここに例を挙げる。








Next Post Previous Post